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file4-8 残像 [同調(シンクロ)]

4人はユウキのアパートに着いた。鑑識の調べもほぼ終わり、刑事も聞き込みをある程度終わったようだった。
4人が到着すると、アパートの住人が通りに出ていて、怪訝そうな顔で睨まれた。
「何だか、乱暴な聞き取りでもしたのかな・・何だかみんな殺気立ってる様な気がするな。」
そう言うと、一樹は2階に上がった。ソフィアも亜美も続いた。レイが車を降りると、その場で立ちすくんだ。その様子に亜美が気付いて、階段を駆け戻った。

「どうしたの?」
「だめ・・周りに強い思念波があり過ぎる・・みんなが私を責めるような・・」
「ちょっと!一樹、来て!」

その声に一樹が戻ってきた。
「困ったな。・・どうすればいいんだ。」
そう聞いて、ソフィアが住人のところへ行った。事情を丁寧に説明していた。徐々に、住人が自分の部屋に戻っていった。

「やっぱり、さっき、刑事が来て、日本語が判るのかとか、お前らみたいのがいるから無用心なんだとか、汚い言葉で侮辱して、脅すようにいろいろと聞き出して行ったみたい。」
「何て奴らだ。変わってないな。ソフィア,申し訳ない。仲間がやった事だ、俺からも詫びとくから。」
「大丈夫よ。一樹のこと、今、一生懸命、友達を探してくれてるっていったら納得してくれた。それと、やっぱり夕べ、ここに見知らぬ車が停まっていたらしいわ。乗っていたのは3人だって。」
「そうか。ありがとう。きっとそいつらがユウキをさらっていったんだろう。」

一樹は振り返って、レイを見ると、どうやら落ち着いたようで、
「・・最近、またチカラが強くなってるの。周りの感情とか思念波で感じるようになって・・・もう、大丈夫。さあ、その子の部屋に、行きましょう。」
そう言って2階に上がっていった。

ドアの前で、レイはシンクロを始めた。髪の毛が少し青みがかって見えた。
「ダメ。シンクロできない。やっぱり、女の子は意識がないみたい。」
「ダメか・・」
「でも・・ここに来てわかった事がある。私が朧気にみた風景はココ。」
「やっぱりそうか。」
「そう・・この位置から、ちょうど下の道に黒い車、大きいバン。・・それから、ドアの前に男が立ってる。」
「どんな奴かわかるかい?」
「日本人みたいね。でもすごく大きい。肩幅があって、髪の毛は短いわ。・・いえ、短いんじゃなく、後ろで縛ってる。長いわ。そして、口に何か当てられた・・そして・・気を失ったみたいね。」
「やぱりここで拉致されたんだな。」

レイは目を瞑り、必死に昨日見た映像をたどりながら話した。
「車が見えるけど・・ナンバーは隠されてる。・・真っ黒。窓も黒く塗ってある・・ミラーだけ銀色に光ってる。・・ごめん・・これくらいしか無理。」
レイは、そう言うと、その場に座り込んでしまった。
一樹はレイのその言葉を聞きながら、葉山の事件を思い出していた。あの時の状況と似ていたのだった。

「もう良いよ。ありがとう。」
一樹はそういうと、レイを抱え上げた。そして、そのまま、階段を下りていった。亜美もソフィアも少し羨ましそうにその後を続いた。

フリーライターの林が、少し離れた場所からその光景を見ていた。4人の会話は聞こえなかったが、あの娘から何かを聞きだしているのは充分にわかった。そして、一樹がその娘を抱えて降りてくる光景を見て、やはりかなり深い秘密があるのがわかった。

4人は車に乗り込んだ。
「署に戻って・・少し休むか・・」
そういうと、一樹は車を走らせた。林はバイクで一樹の車を追った。


タグ:残像
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