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35.プリム変貌 [AC30第1部グランドジオ]

ガウラは慌ててやってきて、すぐにプリムの容態を診た。昨日までの自分の診断では、それほど早く回復するはなかった。だが、目の前のプリムは、完全に回復している。一体、何が起きたのか見当もつかなかった。
「どうなんです?ガウラさん。」
ハンクが訊くが、ガウラは答えられなかった。ただ「回復している」としか言いようがなかった。しかし、ハンクは喜んだ。理由などどうでもよかった。とにかく、瀕死状態だったプリムが元気になっている。この事実だけで充分だった。昨夜ここを出る時、もはやプリムは戻って来ないに違いないと諦めていたからだった。
「プリム!良かった、良かったなあ!」
ベッドの脇で、ハンクがプリムの手を取って喜んでいる。アランはその様子をじっと見守っていた。
やがて、プリムがゆっくりと目を開ける。だが、しばらくは周囲の様子を探るように目だけを動かしている。そして、ゆっくりと起き上ったのだった。これには、ガウラが一番驚いて、眼を見開いて様子を見る。
起き上って周囲を見回すプリムの表情が少し硬く感じられた。なにかぎこちない。
「プリム、どうした?俺だ、判るよな、ハンクだ。」
プリムの様子を察して、ハンクが言う。するとプリムが答えた。
「ハンク・・そう、君は・・ハンク・・だ。」
その声は、まるで別人だった。それを聞いて、アランがグラディウスをプリムの目の前に突き出した。
「お前、誰だ?プリムじゃないな!」
ベッドに座るプリムは、グラディウスの剣先をいきなり掴んだ。すると、グラディウスの剣先が赤く発色しはじめ、アランが思わずグラディウスを手放した。グラディウスの柄が急に高温になったのだ。カランカランと、グラディウスが床に転がっていく。
フローラのベッドの傍にいたキラも、異変に気付いて、プリムのベッドのところまで来た。
ハンクとガウラを守るようにアランが、異様な雰囲気を醸している『プリム』と対峙していた。
「何者だ!・・どうやって入り込んだ!」
アランが厳しい声で問う。
『プリム』は頭を左右に動かし、周囲の様子を探っているようだった。その動きはやはり人間とは違う。どこか機械のような動きだった。
キラが床に転がったアランのグラディウスを拾い上げ、再び、アランに手渡すと、アランは、『プリム』の右手に回り込んで、剣先は肩に乗せたまま『プリム』を睨みつける。いつでも切り掛かれる態勢を取った。キラは、『プリム』を挟んで、アランとは反対側で同じようにグラディウスを構えた。右と左の両方から『プリム』を挟み込む。狩りに出るとき、二人がいつも取る態勢で、同時に切り掛かかって倒すのだ。
「プリムをどこへやったんだ?」
キラが問う。
「プリムを食ったのか?」
今度は、アランが問う。じりじりと間合いを詰めていく。キラとアランの呼吸が揃った瞬間、二人が一気に切り掛かった。ガチンと鈍い音がした。二人のグラディウスが硬いベッドのフレームを叩いた音だった。目の前に『プリム』の姿はなかった。
「どこだ?」
二人が周囲を探す。だが姿が見えない。
「あそこ!」
ガウラが指差して叫ぶ。『プリム』は高く飛び上がり、ホスピタルブロックの天井に張り付いていた。
「やはり、虫の類か!」
アランが叫ぶと同時に、『プリム』の手がゴムのように伸びてきて、アランのグラディウスを掴んだ。それを防ごうとして切り掛かったキラのグラディウスもゴムのように伸びてきた手に包み込まれ、一気に取り上げらえてしまった。
慌てる二人に、『プリム』の声が響いた。
「危害は加えませんから、止めてください。」
そう言うと、『プリム』は天井から降り、床に降り立った。そして、次第に、形状を変えていく。
目の前には、丸いボール状の白い塊が現れた。

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