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36.ガーディアンCPX [AC30第1部グランドジオ]

 目の前の白いボールには見覚えがあった。それは、フローラを運んできたライブカプセルが縮んだものだった。ただの容器装置だと思っていた。
「やはり、あなたたちを騙すのは無理でした。私は、ガーディアンCPX4915です。」
どこから声が出ているのかわからないが、確かに目の前の白いボールから声が聞こえた。
「ガーディアン?」
一部始終を恐れながら見ていたハンクが訊いた。
「そうです。わたしはフローラ様のガーディアン・アンドロイドです。フローラ様をお守りする為にオーシャンフロントで開発されました。ライブファイバーで何にでも変化できます。プリム様の人体情報で寸分も違わぬはずだったのですが・・やはり、外見だけではすぐに見破られますね。」
妙に人間じみた言い回しで、白いボールが答えた。
アランとキラはまだ警戒している様子だった。
「大丈夫です。私は人間に危害を加える事が出来ないようプログラムされています。」
CPX4915が言った。
「フローラに危害が加わるような時はどうする?相手に刃向う事はないのでは守れないだろう。」
アランが訊く。
「いえ、その時は、フローラ様を全身で包み込みます。ライブファイバーの強度は最強です。あなたたちの持っているグラディウスも同じ繊維でできていますから、その強度はご存じでしょう。」
アランは足元に転がっているグラディウスを拾い上げて、しげしげと眺めた。
「気を付けてください。私と接触しましたから、グラディウスもライブファイバーに戻ったはずです。あなたが念じる形にすぐに変形しますよ。」
そう言い終わらないうちに、アランの手にあったグラディウスは、いくつもの剣先をもつ複雑で恐ろしい形状の剣に変わってしまった。思わず、アランはグラディウスを手放してしまった。すると、今度は小さな丸い形状に変形した。
キラも同じようにグラディウスを拾い上げた。すると、グラディウスは大きな盾の形状へ変化した。
「おや、キラ様の御心は、武器よりも防御するものを必要としているようですね。」
キラはじっとその盾をじっと見て何かを念じた。すると、グラディウスは小さなキューブ状になった。
ようやく、皆が落ち着いたようだった。
「ええ・・とCPXさんって呼べばいいのかしら?プリムはどこかしら?」
ガウラがちょっと躊躇いがちに訊いた。
「CPXで結構です。私はガーディアンです。単なる機械です。…プリム様は、昨夜容態が急変しました。あのままでは心肺停止まであとわずかでした。それで、コールドスリープ(冷凍睡眠)状態にしました。」
「コールドスリープって・・どこにそんな・・・。」
ハンクが言う。
「おや、ご存じないのですか?ホスピタルブロックの薬品庫の奥に大きなコールドスリープ装置があります。まだつかわれた痕跡はありませんでしたが、正常に作動しました。・・・これでしばらく、プリム様は永らえる事が出来ます。」
CPXは事もなげに言った。それを聞いて、ハンクとガウラが薬品庫に飛んでいく。CPXが言った通り、ハンクの体が、透明の筒状のガラスの中で眠っていた。
「ここには、プリム様を治療できる薬剤がありません。ユービックにアクセスしたところ、どうやらコアブロック脇のセントラルホスピタルブロックにあるようです。薬を手に入れる事が出来れば、プリム様は回復できます。ですが、そこまでへの通路は発見できませんでした。」
CPXの答えに、キラが訊いた。
「ユービックにアクセスできるのか?」
「ええ、簡単です。どこにあっても問題ありません。キラ様のユービックにもアクセスしました。あなたは、何度かコアブロック近くまで行かれている。あそこへの入り口をご存じなのでしょう。すぐに薬を取りに行きましょう。」
CPXは途轍もない能力を秘めているようだった。すべてを見通している。だが、キラは、それほどのCPXを開発したオーシャンフロントの科学力を恐ろしく感じていた。
「その前に訊きたいことがあるんだが・・・。」
キラが言う。

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