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6日目⑦ローカルバス [琵琶湖てくてく物語]

時間になったのでバス停へ向かう。客は私たち二人だけ。やはり、ここでも公共交通機関の利用は少ないようだ。
全国、都市部を除いて多くの地域でローカルな公共交通機関の存続が危ぶまれている。
私が子どもの頃は、自家用車はようやく一家に1台という状況で、父親が通勤に使うと、外出にはバスを使うほかなかった。
買い物に出かける時は必ず利用していた。
私の田舎は、バス路線の終点だったし、峠道を越えなければスーパーマーケットや病院さえなかったので、母や祖母と一緒に乗った思い出がある。
それが、セカンドカー時代になって、たいていの外出は、自家用車を使う暮らしになった。二人暮らしの我が家でも、自家用車を2台保有しているので、公共交通機関を使う必要はほとんど無くなった。今後、必要になるとしたら「免許返納」の時だろう。
もっとも、高島市の公共交通機関・バスは路線数が少なく、我が家の近くにはバス停などない。バスの姿を見る事もない。それ程、バスはなじみのないものになってしまった。
そろそろ、次世代の交通インフラを考える時期になっているかもしれないと思う。マイカーブームの中で育った世代、ステイタスのごとく高級車に走る世代、そういう世代が高齢化していく。環境問題の中で、EV化も進んでいるが、結局、今の自動車のエンジンをモーターに置き換えるだけでは、少子高齢化・マイカー離れの時代には応えきれないのではないだろうか。公共交通機関も大量輸送ではない方向を考えることも必要になっていると思う。「空飛ぶ車」が一つの突破口になるとは思えない。それよりも、もっと手軽に必要な場所へ行ける手段として「超小型EV」を普及できないかとも思う。まあ、私の生きている間に実現するとは思わないが、過疎地や高齢化している地域で、国主導でも良いから(本当は地方自治体主体が望ましいが)、実証実験を進めてみたらどうかと思う。離島での小型EV利用などのニュースを見ると、大いに期待したくなる。
路線バスと言えば、幼稚園の時(今から57年前?)、通園のために使っていた市バスが事故を起こした記憶がある。
満席に近かった車内に、幼稚園児の私は座る席がなくて、バスの中央部にあった銀色のポールにしがみついていた。峠道をゆっくりと越えて、S字の道を降りていく。その先には、自衛隊の基地の外周を走る道路があった。道路脇には御濠のような水路がある。
雨が激しく降り、視界も悪かった。前を行くバイクを追い越そうとして、バスが右側に頭を振った瞬間、大きく傾いた。そしてそのまま、御濠の土手を滑り落ち、転落したのだ。
幼い私は、無意識に銀色のポールにしがみついた。目の前の風景がスローモーションで回転して、座っていた人たちが叫び声をあげて、宙に浮き、重力によって落ちていく。
バスは天井を一度地面につけてから横倒しになった。椅子や窓ガラスに血糊が見えた。うめき声や泣き声が聞こえた。
私は、ポールにしがみついたまま、横に倒れていた。どれほどか時間が経ったのか判らないが、横倒しになったバスの窓ガラスを割る音がして、大人の声が聞こえた。救急車の音が聞こえたような気がしたが、それよりも、雨音の方が耳に残っている。
余りに幼かった私にはその事故がどれほどの被害を生んだのか判らないが、乗り合わせていた中で無傷だったのは、私だけだったと母から聞いたことがある。
それ以来、バスが苦手になった。小学校の社会科見学や修学旅行で大型観光バスに乗ると、すぐに気分が悪くなってしまうようになっていた。今は、すっかり克服しているのだが、ただ、路線バスに乗るとついあの時の光景を思い出してしまう。
バスは、近江八幡駅に向かって走る。
バス事故の話は、妻にも話したことがある。だが、幼い時の話なので、ひょっとしたら大した事故ではなかったのかもしれないとは思うが、やはり、ついつい思い出してしまう。

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よしあき・ギャラリー

長命寺、近江八幡、どれをとっても懐かしい!
by よしあき・ギャラリー (2023-07-29 16:56) 

白井貞信

コメントありがとうございます。喜んでいただければ幸いです。長命寺は良い街だと思います。
by 白井貞信 (2023-07-31 20:29) 

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