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アスカケ(空白の世紀)プロローグ [アスカケ-プロローグ]


アスカケー空白の世紀ー

ここは、高千穂峰の懐深く、霧に埋もれるように村はあった。
まだ、日本が倭国と呼ばれ、大和朝廷が生まれる前、島々にはいくつもの国があり、大陸や半島からの渡来人や太古からの倭人が穏やかな暮しをしていた時代の物語である。

「ナレ」の村は、北に高千穂の峰を背負い、東西には高千穂峰から続く尾根が伸びた間に広がる小高い丘にあった。

村の周囲には、獣除けの堀と杭が設えらており、南に大杉の太柱を立てた頑丈な門があった。30ほどの家族が、それぞれに住居を持って暮らしていた。
村の中央部分には広場があり、その中心には絶えず松明に火が点されていた。そして、村の北側には、大杉の柱をもった高楼があり、見張り役を兼ねて長老が一日中座っていた。若い男たちは、周囲の山で狩猟や樹の実の収穫などをし、若い女たちは、東の尾根に作った畑で作物を育てて、食糧を得ていた。衣服を作る者、薪を作る者、水を汲む者、家を作る者・・村人それぞれに役割を持ち、協力し合い穏やかに暮らしていた。

その暮らしは、はるか太古より引き継がれたものであった。しかし、この一族は、縄文の昔よりここに生きてきたのではない。わずか200年ほど昔、大陸の内乱を逃れ、邪馬台国を頼って、朝鮮半島を抜け、海を渡って倭国に辿りついた一族であった。しかし、邪馬台国がその勢力を失い、倭国の内乱が起きた時、迫害を避けるようにひっそりとこの地へ隠れ住んだのであった。


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