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2-3 難波津へ到着 [アスカケ(空白の世紀)第6部 望郷]

アスカとカケルが到着したことはすぐに難波宮に知らされた。
難波宮には、難波比古とユキがいた。摂津比古が隠居し、今は、難波比古がしばらく統領を務めたあと、都から皇女ヒカリが難波宮の統領として着任したものの、皇女ヒカリは、皇の妹して、主に、西国や九重、韓国などとヤマト国の外交の任を担うことになっていた。難波国の統領は、再び、難波比古が担うことになっていた。
「やっと到着されたか。さあ、皆、出迎えだ。」
難波比古の号令で、宮中にいた者たちは大門へ向かった。
カケルとアスカの一行は、堀江の庄から宮へ続く大路を進んでいく。通りには人垣ができている。
「この辺りはずいぶんと立派になりましたね。」
アスカが感慨深げに言う。
「ああ、初めて難波津へ着いた頃も賑わってはいたが、これほど立派にはなっていなかった。何より、人の数が違う。」
カケルも感慨深そうに言う。
伴をしているユキヒコとカナメは、大和の都とは違った活気に圧倒されていた。
「ミンジュもアヤも、ここで育ったのか?」
ユキヒコが少し驚いた顔をして訊いた。
「ええ、私の居た治療院は、宮の隣にあるのよ。いつもこんな感じだったわ。」
アヤは久しぶりに帰った故郷の様子に驚くモリヒコやカナメを見て誇らしげに言った。
「ミンジュは?」とカナメが訊いた。
「ええ・・その館の先に・・。」
ミンジュの顔は少し強張っていた。
大路の両側には、幾つも大きな館が軒を連ね、その館の奥には蔵がいくつも並んでいる。ウンファンが広めた度量衡によって、難波津では商売が繁盛している。西国や北国、九重、さらには大陸からも様々な品物が流通するようになり、大和の都にも運ばれていた。
アスカとカケルの一行が大路を進んでいくと、様々な人が品物を抱えて近寄り、「献上品でございます」と言っては手渡していく。船を降りてから、その量はかなりなものになり、一行の後ろには大きな荷車がいくつも並んで、宮に向かっていく。
ようやく、宮に到着すると、大門の前には、難波比古とユキ、そしてミヤのほとんどすべての者が並んで出迎えた。
カケルたちは、難波比古の案内で、宮に入り、大広間で休んだ。
「遅れてすまなかった。」
タケルが難波比古に言う。
「お久しぶりでございます。此度は九重へ向かわれるとのこと、皇様より伺い、支度を整えておりました。」
「難波津も久しぶりなので、数日留まり様子を知りたい。」
「御意。では、案内役をお付けしましょう。」
「いや、それには及びません。伴として参った、ミンジュとアヤは難波津の者ゆえ、彼女らに案内を任せることにします。」
難波比古が、ミンジュとアヤを見る。
「おや、随分とお若い方々ですね。」
「春日の杜から参ったのです。十五となったため、此度の旅の伴にと皇タケルから推挙されました。彼らには此度の旅は、アスカケなのです。」
「アスカケ・・おお、懐かしい言葉です。摂津比古様から伺いました。確か、カケル様は銃後の時、郷を出て旅をされ自分の生きる道を探されたと・・それが、アスカケ。」
難波比古はそう言いながら、並ぶ四人の若者に微笑んで見せた。
「彼らにこの上ない体験になるでしょうね。・・私も伴に加えていただきたいくらいだ。」
難波比古の言葉に、四人はうれしそうな笑顔を見せた。
「難波津はたいそう賑わっていますね。都以上のようでした。」
アスカが言う。
「はい、各地から様々な産物が集まり、人も集まります。皇カケル様のご活躍もあり、今は、紀国や伊勢、三河辺りからも産物が入るようになりました。それと・・御存知でしょうが、韓では未だに戦が続いており、戦火を逃れてくる者も数多く参っております。カケル様や皇タケル様のお力によって、ヤマトは安寧な国となりました。それゆえ、皆、安心してやってくるのです。」

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