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37.オーシャンフロントの様子 [AC30第1部グランドジオ]

「ガーディアンなら、全てを知っているんだろう?フローラは何者なのか、そしてなぜオーシャンフロントから脱出しなければならなかったのか、そして、それは何年前の事なのか・・とにかく、フローラに関する事を教えてくれないか?」
キラは椅子に座り、ボール状のCPXを見つめながら言った。アランやハンク、ガウラも同様にCPXを囲むようにして座った。
「判りました。では、ユービックをここへ持ってきてください。」
CPXはそう答えた。すぐにガウラが自分のユービックを持ってきてCPXの横に置いた。すると、CPXはユービックを包み込むように変形し、小さなテーブルの形状になった。天板にはユービックが置かれている。ユービックが青白い光を発すると、そこに緑の山の3D映像が浮かび上がった。
「これがオーシャンフロントの全景です。周囲30㎞、中央部の最も高い場所は海面から500mほどあります。人工島です。このジオフロントと同じ時代に作られました。最大50万人ほどの人間が生活していた記録があります。」
その大きさは、ジオフロントを遥かに凌ぐ大きさに間違いなかった。
キラたちはじっとその映像に見入っている。
「この島の最大の特徴は、潮の流れを使って移動することです。大規模な気候変動を予見した科学者によって、この島は、快適な環境へ移動する機能を持たされているのです。常に、外気温が26℃前後のエリアを探して、地球上のどのエリアにも移動します。そのため、人間は地表で暮らすことができます。食糧も生産しています。また、すでに絶滅してしまった動植物も生き続けているのです。」
3D映像は、島全景から少しズームアップし、人々が暮らしているエリアの様子を映し出した。多くの人々が屋外で太陽の光を浴びて過ごしている。脇には、見たこともない四足の生き物が走り、樹木も多様に茂っている。
「ユートピア・・だな・・。」
キラが思わずつぶやいた。
「ユートピア?」
ハンクが訊く。
「ああ、理想郷という言葉さ。人間が生きる、理想の・・夢のような場所の事さ。」
キラが答えると、ハンクは「ユートピア・・か。」と小さく呟いた。
「だが・・どうして、そんな素敵な場所から脱出したんだ?」
アランが訝しげな表情を浮かべて訊いた。
「それを説明するには、少し、パシフィックフロントの歴史をお話ししなければなりません。」
「ああ・・いいさ。」とアランが答えた。
「最初の100年ほどは、穏やかに皆が暮らしていました。しかし、余りにも良い環境でしたから、人口がどんどん増え始めました。もともと、オーシャンフロントは10万人程度が暮らすように設計されていました。そこに最大50万人ほどまで人口が増加したのです。当然、様々なものが不足し始めました。そして、次第に治安が悪化し、ついに暴動があちこちで起きるようになったのです。統治機構は、人口抑制を判断しました。その結果、ヒューマン・ソーティングが始まったのです。」
「ヒューマン・ソーティング?」
キラが尋ねる。
「選別するのです。・・DNA分析で、より優秀なDNAを持つ者をエリートと呼び、フロントの高い場所にあるセイフティエリアに住むことを許したのです。選ばれなかった者は、下層に住まわされました。当然、セイフティエリアには潤沢に食糧や必需品が提供されました。下層には物資が抑制されました。結局、下層では治安が悪化し、人々が殺し合うまでに至りました。こうして、人口の抑制を進めたのです。」
「なんてことを・・・」
ガウラが悲しい表情で呟く。しかし、キラやアランは複雑な思いだった。自分たちも、ジオフロントのエナジー危機の際に「選ばれし者」の子孫であることを知っているからだった。
「フローラ様は、エリートの中でもさらに高いクラスで生まれたのです。フローラ様のDNAはパーフェクトです。人類の持つ最も優位なDNAを持っておられるのです。」
CPXは少し自慢げに言った。アンドロイドであるはずだが、人間の様な感情を見せるところが異様だった。
「そんなハイクラスのエリート様が、どうしてオーシャンフロンから逃げ出すことになったんだ?」
アランが妬みを込めた言い方で、再び訊いた。


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