SSブログ

33.準備 [AC30第2部カルディアストーン]

決意を固めたキラは、泣き崩れるガウラの背を優しく撫でながら、「わかってほしい。」と繰り返した。
ガウラはしばらく泣いていたが、「わかったわ・・私も何かできることを探すわ」と応え、キラの覚悟を受け入れたようだった。
キラは、すぐに、出発の準備を始めることにして、エナジーシステムの調整を続けているエリックに告げた。
「オーシャンフロントへ行く。皆を連れ戻す。それまで、ガウラや皆を支えてほしい。」
「お任せください。エナジーシステムさえ回復すれば、ここは大丈夫です。快適に生きていけるよう、お戻りのころには、見違えるようなジオフロントにしておきましょう。」
エリックは作業を続けながら答えた。

キラは、エリックを手伝っているPCXに言った。
「PCX!オーシャンフロントへ案内してくれ。皆を連れ戻すんだ。」
「よろしいのですか?」
「君が、オーシャンフロントの何者かに支配される可能性が高いことは承知している。だが、君の助けなしには、たどり着けないだろう。それに、ここに残したところで、オーシャンフロントに支配されるのは一緒だろう。それなら、道は一つだ。」
迷いを吹っ切ったキラの意思は固かった。
そして、これから起こる想定を超える出来事をも必ず乗り越えてみせるという気持ちは、PCXにも伝わった。

「わかりました。おそらく、オーシャンフロントに近づけば、影響を受けるでしょう。出発までに何か策はないか探ってみます。」
「そうしてくれ。」
「キラ様は、フードブロックから1週間分の食糧を調達してください。オーシャンフロントはおそらくかなり遠ざかっていると思います。海上を行きますから、途中で、食料や水は調達できないかもしれませんから。」
「判った。すぐに取り掛かる。」
「それから、小さな武器が必要です。アラミーラも、もっと良い性能のものを選びましょう。そちらは私が準備します。出発は、明日にしましょう。もう、地表は熱波に覆われ始めています。急がなければいけません。」
「そうしよう。」

キラはフードブロックで食料の調達を始めた。
皆が囚われてから、満足な狩猟もできず、わずかな食糧が残っている程度だった。自分が戻るまでの間、ガウラや母たちの必要なものを残さなければいけない。キラは、ドラコの干し肉を一握りと、フィリクスの実のフレークをわずか程、袋に入れた。

キラのところへ、キラの母たちがやってきた。
ガウラから、話を聞いた様子だった。
「どうしても行くのかい?」
キラの母ネキは、心配げな表情で遠慮がちに聞いた。息子の決意は理解している。今さら引き止めることなどできないことも承知している。それに、皆を連れ戻さなければ、ジオフロントは自分たちだけになり、いずれ滅びてしまうことも分かっていた。だが、息子が再び危険な旅に出ることを喜ぶことなどできなかった。
「母様、すみません。決めたことです。こうなってしまったのは、僕があの扉を開いたことが原因です。必ず、皆を連れ戻してきます。信じてください。」
キラは、涙を見せぬよう必死の形相で母に告げる。
「そうかい・・そうだね・・・信じているから。」
ネキはそう言うと、キラの手を強く握った。
すると、一緒にいた女性たちが、キラを取り囲むように身を寄せた。皆の思いは一緒だった。温かい思いがキラの身を包みこんでいた。

翌朝、日が昇り切らないうちに、キラとPCXは地表に向かった。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0