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32.決意 [AC30第2部カルディアストーン]

キラは、一旦、ガウラの許へ戻った。
ガウラはまだ眠っていたが、随分と穏やかな寝顔を見せている。キラはまだ答えを出せずにいた。
ガウラのベッドの脇に座り、目を閉じ、出るはずのない答えを探している。

「キラ・・」
しばらくして、ガウラが目を覚ましたようだった。
「ああ・・ここに居るよ。」
ぼんやりとしているガウラに、顔を近づけて答えた。
「システムは回復したの?」
キラは首を横に振りながら、「エリックがシステムを調べているんだ。時間が掛かるようだ。」と答える。
ガウラは、小さく「そう・・」と答え、天井に視線を向けた。
ガウラも、ここからの未来を思い浮かべ、やはり、答えのない問いを繰り返しているようだった。静かだった。時間が停まっている。いや、もともと、コアブロックは遥か昔に時間を止めているのだが、それがまさしく現実のものの様に感じられた。
突然、グーンという低い唸りにも似た音が響き始めた。徐々にその音は高くなっていく。何かが高回転しているような音だった。
「キラ様!」
エリックの声が響く。キラが驚いて飛び上がった。
「どこだ?」
どうやら、声は、室内のどこかにあるスピーカーから聞こえているようだった。
「キラ様、エナジーシステムは起動しました。・・ストーンの取り付け方が違っていたようです。安定して徐々に出力を上げています。完全に復活するまでもうすぐです。」
その声とともに、コアブロック全体の照明が輝き始めた。
「徐々に、エナジーがジオフロント全体に行き渡るでしょう。もう大丈夫です。」
再び、エリックの声が響いた。
「やったぞ!ガウラ!」
キラはガウラの手を取った。ガウラも力強く握り返す。そして、ガウラの目には大粒の涙が溢れていた。
「よし!オーシャンフロントに行く!何としても、ハンクたちを連れ戻すんだ!」
キラは答えを出した。
「でも・・無事に戻れるかどうか・・・。」
ガウラが心配する。
「いや、必ず戻る。カルディアストーンだって、持ち帰ることができるかどうかわからなかったんだ。それでも、持ち帰ることができた。」
「それは・・PCXの力を借りたからでしょう?今度は、そんなふうにPCXが協力してくれるかどうか・・」
「ああ、判らない。でも、ジオフロントは復活したんだ。これで、僕たちの未来は変わる。そのためには、ハンクたちは居なくちゃ。・・・みんなが戻って来なければ、ジオフロントが復活したとしても、意味がない。このまま、ここに留まることこそ無意味だ。」
「行けば・・命を・・命を落としてしまうかもしれないのよ・・」
ガウラは不安げであった。
「ああ・・そうかもしれない。それでも、行かなくちゃならない。」
「あなたは、カルディアストーンを持ち帰った・・すでに、充分に、勇者の役割を果たしてるわ。」
「いや・・僕は、禁断のエリアの扉を開けた。・・勇者として、ジオフロントを復活させる使命があるんだ。・・命と引き換えにしても、皆を連れ戻さなければならない。」
「もし・・戻らなければ?・・誰も戻って来なければ・・私は・・私は・・どうすればいいの?」
ガウラの言葉は行き場を失い、泣き崩れた。
キラは覚悟を決めていた。
「ガウラ、判ってほしい。・・僕は、必ず戻ってくる。例え、PCXが裏切ることがあっても、僕一人でもやり遂げてみせる。そうしなくちゃ、アランにも顔向けできない。」

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