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file4-6 拉致事件捜査開始 [同調(シンクロ)]


一樹たちは、一旦、署に戻って、直に鳥山課長に次第を説明した。
「行方不明か・・妙な雲行きになってきたな。・・念のため、その部屋を調べてみよう。もし、誰かが拉致したのなら、何らかの形跡が残っているだろう。すぐに、鑑識を行かせよう。それと、昨日の夜の状況も調べさせてみよう。」
「じゃあ、すぐにでも、捜査本部を立てますか?」
「いや、まだだ。お前は、店のママから、その娘の情報をもっと聞き出してくれ。まだ、事件かどうかわからないから、少し慎重にすすめないといけない。署長には話は通しておく。いいな。」
一樹も、若い娘が一晩居ないというのは、ありがちなことだ。ただ、余りにも不自然な事が多いし、ソフィアの心配はおそらく的中しているだろうと思ってもいた。だが、まだ、確証がなかった。
「判りました。・・あ、それと、これ、娘の写真です。部屋にあったので・・聞き込みに役立つだろうと思いまして。」
課長は写真を受け取り、刑事課の課員にコピーして持たせるように手配し、周辺の聞き込みに向かわせた。

亜美とソフィアは資料室にいた。ソフィアはじっと目を閉じ俯いていた。亜美はその様子を見てどう声を掛けたものか思案していたが、
「ねえ、ソフィアさん。一樹は貴女のお店にはよく行くの?」
事件の事ではなく、一樹とソフィアの関係が気になってつい訊いてしまった。
ソフィアはその問いに、少し考えてから
「1年くらい前から・・週に1日くらい。夜遅くにね。」
極めて素っ気無く答えた。
「一樹はそんなにお酒は好きじゃないのに・・何か目的があるの?」
「さあ、たぶん、私に会いに来てくれてるのよ。」
ソフィアには亜美の一樹への想いが判っていて、ソフィア自身も一樹を愛しく思っていた。だから、あえて、嫉妬させるような言い方をしてしまった。

一樹が部屋に戻ってきた。
「課長が、一通り、捜査をしてみようと言ってくれたよ。今、鑑識と聞き込みに行ったぞ。これでもう少し状況がわかるはずだ。・・大丈夫さ、きっと無事だよ。」
その言葉に、ソフィアは立ち上がって、一樹に抱きついた。
「ありがとう、一樹!きっと無事よね。」
その様子を見て、亜美は興奮気味に言った。
「一樹!ちょっと!・・ねえ、一樹!ソフィアさんとは一体どういう関係なの?ちゃんと話して!」
その声に一樹はきょとんとした顔をした。そして、ソフィアを見て『何を話したんだ?』という視線を送った。
「どういう関係って・・」
そう言いながら、抱きついているソフィアを離して、
「どういうって、店のママと客だよ?時々、行ってる馴染みの店ってとこかな?」
「だって・・お酒なんか飲めないくせに!ママに会うのが目的なの?」
「え?・・ああ、そうだな、ママに用事があるってのは嘘じゃないか。」
「どんな用事なの?・・それって、ママの事が・・」
亜美が勝手に話を作り上げそうだったので、一樹は正直に説明する事にした。
「落ち着けって。何、興奮してるんだよ。・・ちゃんと説明するから。実は、葉山の事件のあと、捜査本部も解散してしまっただろ。その後も俺一人で引き続き情報を集めてたんだ。その中で、ママの店の事を聞いて、協力してくれるっていうんで、情報を得る為に通ってたんだよ。」
「本当にそれだけ?」
亜美とソフィアが同じ事を訊いた。
「おいおい、おかしいぞ、二人とも。・・そりゃ、ソフィアは綺麗だし、優しいし、俺だってそれだけかって言われると・・」
ソフィアは笑顔で答えたが、亜美は渋い顔をしていた。
「なあ、そんなことどうでも良いんだよ。今は、ユウキの事だろ。」


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