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file4-11 襲撃 [同調(シンクロ)]

F4-11 襲撃
置手紙どおり、一樹はソフィアと一緒に、アパート周辺の聞き込みをしてまわった。ソフィアが知っているユウキの知人や立ち寄り先等も回ってみた。一緒に居る事でみんな意外と快く応じてくれたのだが、特に具体的な情報は得られず、すっかり日が暮れてしまった。
ソフィアは、ユウキの事が心配で、何としても手掛かりを手に入れたいと頑張ったが、昨夜もほとんど眠っていない為、もうすっかり疲れ果てていた。
「ソフィア、少し休もう。日も暮れてきたし・・そうだ、店に来る客からも何か情報が手に入るかもしれない。一旦、店に戻ろう。」

店を開けられる気分ではなかったが、一樹の言うとおり、ひょっとしたら何かの情報が手に入るかもしれない、それに、一樹が一緒に居てくれるなら、少しは気も休まるかもしれない。そう考えてソフィアも応じた。

店に戻ると、ソフィアは在り合わせの材料で夕食になるものを作った。一樹は、それを食べながらこれまでの情報を頭の中で整理していた。
「ユウキの拉致と、怪しげな手術の話は必ず繋がっているはずだ。それと、葉山の件。同じ容疑者だとするとあの事件と今回の事件には同じ組織が絡んでいるはずだ。」

ドアのカウベルが鳴り響いて客が入ってきた。
「やっぱりここか。」
客は、林だった。
「どこかでみた事ある顔だと思ってたんだが、俺の記憶力もたいしたものだな。」
そう呟きながら、カウンター席に座った。
「何しに来た!」
一樹が強い口調で言った。
「おいおい、客に対してそれはないだろ。・・ちょっと酒でも飲みたくなってね。なあ、ママ。ビールくれよ。」
ソフィアは、一樹の態度を見て、招かれざる客だとわかったのか、何も言わずビールを出した。
「なんだか、愛想のない店だな。・・・なあ、今、何を調べてるんだ?拉致事件はわかってるが、他の刑事たちとは別行動だろ?それに可愛い女の子を引き連れて・・ちょっと教えろよ。・・俺だって少しは役に立つ情報を持ってるかもしれないぜ?」
一樹は相手にしたくないながらも、林の言うとおり、「怪しい情報」については案外こいつのほうが知ってるかもしれないと思った。一樹は一息ついてから
「捜査中の案件の事は話せないのは判ってるだろ。・・まあ、いいさ。・・お前、美容整形の怪しい情報知ってるか?」
「美容整形?・・ふーん・・・」
林は何やら思案した表情を見せていた。そして、
「一樹が知りたい情報だけ出すのはなあ?・・俺にも一つ情報をくれないか?そしたら知ってる事を話してやるよ。」
「何が知りたいんだ?」
「・・・あの・・今日、救急車で運ばれた女の子の話だ。どこの誰だか、お前とどんな関係なのか?何だか秘密めいたものを感じるんでなあ。ちょっと面白そうだからな。」
「ダメだ!レイの事は話さない!」
「レイって言う名前か。そうか、神林病院に確か、新道レイっていう名の女が居たっけな。院長の寵愛を受けてるとか、特別扱いされているらしいな。・・・アメリカ帰りだってな。・・だが、お前とどんな関係だ?」
「何もない。もう帰れ!」
「わかったよ。・・ヒントはもらったんだ、アリガトな。・・ひとつ、お前の言う怪しい情報ってのは、無料で手術してくれるっていうやつかい?・・俺も耳にして途中まで調べたんだが、実際、手術を受けたっていう女は誰も居ないんだよ。・・居ないんじゃなくて、どこかへ消えちゃうんだよ。おかしいだろ?まあ、ここまでだな。これ以上はな。」
林はそう言って、出されたビールを飲み干して立ち上がった。
「今日は一樹のおごりだな。じゃあな。」
そう言って出て行った。

「なんだ、大した情報じゃないだろうが、それくらい判ってるんだよ。その病院がどこかって事なんだ!」
一樹も、林が残していった瓶ビールを手にとって、一気に飲み干した。

またドアのカウベルが音を立てた。
「何だ?忘れ物か?」
てっきり、林が戻ってきたのだと思ってドアを見ると、黒い覆面をした躯体のいい男が3人立っていた。一人の手にはナイフが光っている。良く見ると、すでに血のりが付いていた。
「何だ、お前ら!」
そう言うと同時に、一樹はカウンターの奥へ飛び込んだ。そして、ソフィアを厨房の奥へ隠すように身構えた。男たちはどかどかと入ってきた。一樹はカウンターの下にあった包丁を手にした。
最初にカウンターに入り込んできた男の腕を包丁で切りつけた。血が飛び散り、他の男が少し引いた。ナイフを持っている男が前に出てきた。にらみ合いになる。ひとりが一樹に飛び掛った時、ドアが開いて、林が飛び込んできた。
「なんでこんな事に巻き込まれちゃうんだろうね。」
林は手に木刀のようなものを持っている。見ると、右足から血が流れている。
「暗闇でいきなり襲うなんて・・卑怯だろうが!」
林には、剣道の心得があった。一樹とともに高校時代、市内でも1・2を争うほどの腕前だった。
「一樹、その包丁じゃあ、小さいなあ。ほれ!」
そう言うと、木刀のようなものを1本一樹に放り投げた。
一樹はそれを受け取るといきなり男の腕を叩いた。持っていたナイフを落とした。同じように、林も、後ろに居る男の背を叩いた。大男3人は思わぬ逆襲にたじろいだ。そして、ものすごい勢いで逃げていった。
表には黒い車が停まっていて、3人を乗せるとライトもつけずそのまま逃げさってしまった。

「ソフィア,怪我はないか?」
一樹が振り返って声を掛けると、ソフィアは手にアイスピックを握り締めて立ち尽くしていた。
「「怖かったかい。もう大丈夫だ。」
そう言って、ソフィアの手からアイスピックを取り上げた。ソフィアは一樹に抱きついて声を上げて泣いた。

「おいおい、俺の心配はしてくれないのか?」
林が、ボックス席に座り込んでいた。右足のキズは相当深かった。
「店を出たところでいきなり出くわしちまってよ。・・何も言わずにドスって刺しやがった。・・痛てえよ。」
一樹はすぐに救急車を呼んだ。そして、鳥山課長に連絡した。

救急車の到着とパトカーの到着はほとんど同時だった。林は救急車で市民病院へ運ばれた。傷は相当深かったが命に別状はなく、入院することになった。一樹は襲撃の一部始終を課長に報告し、すぐに非常手配が掛かった。
「これは、相当大きな事件になりそうだな。・・また襲われるかも知れんぞ。」
「ええ、どうも、怪しい情報ってのは本物らしいですね。・・だが、どうやってここが判ったんだろう。明らかに、殺されそうな勢いでしたから。」
「ふん。ソフィアさんも注意しないといけないな。どうする?」
ソフィアがその話を聞いていて、
「私、怖いです。とても一人じゃ居られない・・・」
「署に行っても、休めるところもなあ・・」
「一樹と一緒なら安心。・・私のアパートに行こう。」
「でもなあ・・まあ、俺のアパートにいくか。署の近くだし、今、非常線が張られてるんだそう簡単には入ってこないだろう。」
「うん。行く。・・そのままずっと居ても良い?」
「馬鹿!事件が解決するまでな!」


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