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file5-1 亜美ふたたび [同調(シンクロ)]

F5-1 亜美 ふたたび不機嫌に
一樹とソフィアが襲われた話を亜美が耳にしたのは翌日の朝だった。昨日、一人残されたことに頭にきて、自宅に戻ってから、大事にしまってあったワインを、がぶ飲みして、そのまま寝てしまった。あれだけ夜中、サイレンが響いていたのにも関わらず、全く気が付かなかったのだ。
朝になって、父から、事件の連絡が入って、飛び起きたのだった。おそらく、その電話がなければ、まだ眠っていたにちがいない。亜美は、身支度もそこそこに署に飛んで行った。

「一樹!怪我はない?」
そう言って資料室のドアを開けると、一樹とソフィアが朝食を摂っていた。
一樹の身を案じて、急いでやってきた亜美が見た光景は、余りにも不釣合いなものだった。
「何なの?この状況は?昨日襲われたんでしょ!何してるのよ!」
「何って、朝飯食ってるんだろうが・・昨日、大変だったんで何だかまともな食事もしてなくてさ。」
「だからって、どうして、彼女がここに居るのよ!」
「どうしてって・・昨日あんな事があったんだ。ソフィアも一人暮らしだしなあ。きっと一人じゃ心細いし、また襲われるかも知れないから、夕べは俺んちに来てたんだよ。」
「一緒にいたって事?」
「ああ・・だからこうして飯食ってんだろ。」
「それって・・」
「お前ねえ、変な事考えてんじゃないよ。」
亜美の反応を見て、ソフィアは、おかしな微笑み方をして
「え?何もなかったっけ?」
と意味ありげなことを付け加えた。
「おいおい!ソフィア、変なこと言うなよ。・・お前、部屋に着いたら、そのままばったり寝ちまっただろう。」
「そうだっけ?」
なんだかやけに楽しそうに会話をする二人を見て一層腹が立った。亜美は怒って出て行った。
「何怒ってんだよ。なあ?」
「一樹のせいね。本当、悪い人なんだから。」
ソフィアはまたにっこり笑った。

亜美が資料室から飛び出したところで、鳥山課長と出くわした。亜美は鳥山に挨拶もせず、バタバタと階段を登っていった。
「おっと・・なんだい、朝から、また矢澤の奴、怒らせたな。ほんとにあいつは女心を理解してないな。」
そう呟きながら部屋に入ってきた。一樹とソフィアが仲良く食事をしている様子を見て、鳥山は納得した。

「おい、矢澤。大丈夫だったか?」
「おはようございます。見ての通り、大丈夫です。・ただ、林・・が怪我をして。」
「ああ、あのフリーライターか。ただ命には別状はなさそうだった。」
「まあ、殺しても死なないような奴ですから・・」
「いずれにしても、襲われるなんて尋常じゃない。やっぱり、大きな事件になりそうだな。」
「ええ・・誰か一人でも捕まえて置けば・・・。」
「まあ、仕方ないだろ。ソフィアさんを守れただけでも良かったじゃないか。」
「ですが・・あの中にきっと葉山の事件の事も・・」
一樹は、鑑識が言っていた指紋の件が頭によぎった。そのことは鳥山も鑑識から話は聞いて知っていた。
「この事件で一気にいろんなことが解決できるようにしようじゃないか。それにしても、お前を狙ったのかな?それともソフィアさんか。」
「ええ、俺を狙ったのなら、店を出たところで林が指されたように、もっと別の場所でも良かったはずです。おそらく、ソフィアを狙ったんだと思います。」
「そうか、ソフィアさんが狙われたのか、それならしばらくお前がボディガードしないといかんなあ。」
「ええ、そのつもりです。まあ、結構、聞き込みでは役に立ちますから。それに、まだ何か知ってる事があるのかもしれませんし、ユウキの知人という事が理由なのかも。まあ、もう少し、ソフィアにも確かめてみます。」
「ああ、そうしてくれ。ただし、紀籐にも気を使ってやるんだ、いいな。」
「はあ、よくわかりませんが・・あいつはいいんですよ。勝手に怒ってるんだから。あ、それで、課長、何か他に進展は?」
「いや、まだこれといった情報は出てない。検問にもそれらしい車両は引っかからなかったようだ。今、みんな聞き込みに出てる。鑑識の詳しい結果も午後には出るだろう。午後から、捜査会議だ。お前も出るんだ。」
「はい。了解しました。」


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