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file5-2 佐藤刑事 [同調(シンクロ)]

F5-2 佐藤刑事
同じ頃、刑事課の佐藤は、武田フーズに居た。課長から指示された、武田フーズの情報集めのために工場に来ていたのだった。
「何でもいいからって言われてもなあ・・事務所の資料はほとんど捜査本部が押収していったし・・その中にはこれといっておかしな事はなかったんだよなあ。」
そう独り言を言いながら、工場脇の事務所に入った。
「ここに監禁か・・・でも、なんで矢澤さんはここがわかったんだろ?偶然とは言ってたけど・・偶然こんなところに来るかな?」
机の中も棚の中にもほとんど書類は残っていなかった。それでも、佐藤は机の引き出しを一つ一つ開けては点検をしていた。事務机の一番下の深めの引き出しを開けると、すっぽりと引き出しが抜け出てしまった。
「なんだ、壊れてるのか?」
元に戻そうと引き出しのレールを除くと、机の袖壁に何かが貼り付いているのが見えた。引き剥がすと、それはどこかの鍵のようだったが、ロッカーや金庫よりにある鍵穴より一回り大きく、頑丈な作りだった。
「どこの鍵だろ?・・・ひょっとして何か重要なものが隠してあるのかも・・」
そう言いながら事務所の中を見て周り、鍵穴らしきところに入れてみるがどれも合わなかった。
「ここじゃなさそうだな。」
そういうと、事務所の外階段を下りて、工場へ向かった。

武田フーズは、倒産直前まで、魁トレーディングが輸入した農産物の下処理を行なって小分けにパッケージする工程を主な業務にしていた。輸入品を置く倉庫と製造の為の部屋、パッキングライン、包装室等がまだ残っていた。冷蔵庫や冷凍庫は電源が切られ、ドアも開けられていた。佐藤は鍵を持ったまま、工場内のいろんな機械を見て回ったが、それらしきものは発見できなかった。
「ここでもないのかな?」
パッキングラインの横には、製品を一時取り置くためのコンテナが山積みになっていた。矢澤が武田と格闘した時に一部が倒れて散乱していた。
「矢澤さんの活躍の場所ってことだな。それにしても大量のコンテナだな。」
そう言って、コンテナの周りを歩いていた時、倒れたコンテナがあった場所の床に、段差があるのが見えた。詳しく見てみると、それは、床下への出入口のようだった。コンテナを大量に積上げてあるため、発見できなかったが、少しずつ動かしてみると、1メートル四方の扉になっていた。そして、その扉には鍵穴があった。
「ひょっとして、これか?」
ポケットから鍵を取り出し差し込んだ。ぴったり入って右に1回回すと、カチッと鍵が開く音がした。
机に隠すようにあった鍵。そして、日常的には出入する必要のない場所にある扉。佐藤は、何か秘密にしておくべきものがここにあるのが容易に想像できた。
佐藤はゆっくりと引き手を持って持ち上げる。コンクリートの床と同じ材質。とても持ち上がりそうにないくらい重かった。それでも、何とか引き上げると、いきなり、異臭が舞い上がった。廃液のような汚物のような何とも言えない臭いだった。余りの異臭にその場に居られず、そこし離れて空気が変わるのを待った。しばらくして、臭いが収まった頃に、中をのぞいてみると下に下りる梯子のようなものが見えた。
中は真っ暗で、下のほうがどうなっているのか全く判らなかった。

佐藤は一旦車に戻ってから、トランクから懐中電灯を持ってきた。
中を照らしてみると、梯子の下にコンクリートの床が見えた。
「何とか降りられそうだ。」
そういうと口に懐中電灯を咥えてゆっくりと降りていった。

「地下室っていうより、床下っていうほうがいいのかな。真っ暗だな。」
工場の建物とほぼ同じくらいの広さがあるだろうか、天井は2メートルほどで、あちこちにコンクリート柱があった。床を照らすと、先の方に大きな窪み・・プールのようになった場所もある。1箇所に銀色に光る機械があった。構造はわからなかったが、その機械には、血のりがべったりと着いていた。懐中電灯の明りでじっくり見てみると、小さく裁断された肉片がこびりついていた。
「まさか・・ここで豚肉を処理するなんてことはなさそうだな。・・ということは・・」
周囲をゆっくり見た。血のりは、機械の反対側から、さっき見たプール状の窪みまで繋がっている。そして、プールの下を照らすと、黒くなった塊が見える。かなりの深さがあるのか、判別する事が難しい。しかし、一つだけ、白いもの、白骨と判るものがあった。
「やはり・・ここで人が殺されている・・」
そう呟いた時、いきなり後頭部を何かで殴られ、プールの中へ突き落とされ、気絶した。


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