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file5-7 聞き込み [同調(シンクロ)]


「一樹、これからどこに行くの?」
会議室を出て、一樹は階段を駆け下りた。資料室に戻ると、机の上のパソコンを起動させた。
少し遅れて、ソフィアが部屋に入ってきた。

「なあ、ユウキみたいに、他にも行方不明になっている人間が居るんじゃないかって思うんだが・・」
「・・知り合いにはいないけど・・ほら、手術を受けたあと居なくなったっていう噂はいくつか・・・。」
「そうなんだ。襲撃された事ばかり見てたけど、やっぱり、その元になっている所が大事なんだよ。・・そうだ・・これだ。」
一樹は、署内のデータベースを開いて、捜索願の一覧を見入っていた。
「何だか・・違うような気がするな・・・捜索願が出ているんじゃなくて・・・ダメだ、そうじゃない。」
食い入るように画面を見ながら、一樹は呟いていた。
「捜索願って家族とか知り合いが探して欲しいって出すものでしょ。」
「ああ・・」
「だったら、私みたいな一人暮らしで知り合いも少ない人間は、居なくなっても捜索願は出ないわね。」
「いや、そういう人間でも、近所の交番が定期的に地域巡回して所在を確認するようになっていて、不審な場合は本署に届ける事になってるんだ。・・そうか、所在不明者のリストを見たほうがいいのか!」
一樹は、所在不明者リストを探した。結構たくさんの名前が掲載されていた。
ソフィアはその名簿を覗いて
「え?こんなにたくさん居るの?」
「ああ、中には、転居とか・・いわゆる借金で夜逃げなんてのもあるし、DVで旦那から逃れてなんてものあるし、ただ、交番勤務の警官がどこまで熱心かもあるんだけどな。」
一樹はリストを一人一人見ながら、何か手掛かりになるものはないか考えていた。

「おや?・・これ・・なあ、ソフィア、これってユウキと似て無いか?」
そこには、日系人の女の子との名前があった。ユカという名前だった。
「そうね。良く知らないけど・・・この子、KTC勤務って、同じ工場よね。」
「ああ、そうだ。ちょうど半年前だな。」
「そういえば、ユウキが勤めてた工場は、そういう一人暮らしの女の子ってたくさん居たらしいわ。だから、居なくなったっていう話をユウキもしてたんだと思うわ。」
「コーポ リベルタか。そう遠くない。行ってみるか。」

そう話していた時、署長と亜美が資料室に入ってきた。
「矢澤、どこかに出かけるのか?」
「ええ、ユウキと同じように行方不明になっている女の子がいたんです。同じ工場で働いていますし、ひょっとして同じ奴らの仕業かとおもいまして。何かわかるんじゃないかと・・」
「そうか。・・それなら、これを持って行け。」
「これは?」
「実は、他にも、2年位前から3ヶ月から半年の間隔で、行方不明になった娘がいるんだ。以前から気になって鳥山課長にも追わせていたんだが・・なかなか見えなくて。それがリストだ。一緒に当たってみてくれ。」
「判りました。」
そう言って署長から名簿を受け取った一樹が、亜美に向かって、
「なあ、亜美。お前、レイさんのところへ行くんだろ。余り無理させるんじゃないぞ。」
そう告げた。
「一樹って、皆に優しいんだね・・私の事は心配しない癖に。」
亜美はちょっと寂しそうに言った。
そんな亜美の様子を気に留めず、一樹は
「署長、容疑者の車はまだ見つかりませんか?」
「ああ、近隣の署にも問い合わせはしてるんだが、今のところ見つかっていない。まったく、あれだけの検問をどうやって抜けたのか。」
「署長、ひょっとして、検問していた地域の中にまだ居たんじゃないでしょうか?・・すぐに逃げ出すと踏んで、国道や主要道路を封鎖しましたが、プロの仕業なら、こっちの動きくらい読めるはずです。検問の位置をもう一度検証して、その内側で潜むような場所がないか当たってみてはどうでしょう。」
「そうか、遠くに逃げるとは限らないか。判った、その件は鳥山課長に伝えて手配してみよう。」
「それじゃあ、行ってきます。」
一樹とソフィアは連れ立って出て行った。後姿を見送りながら、何だか取り残されたような寂しさを亜美は感じていた。
「ほら、亜美。お前もレイさんのところだ。体に無理が起きないよう注意して、シンクロしてもらうようにな。様子を見ながら、何かわかったらすぐに連絡しなさい。」
「はい。」
そう言って亜美はレイのいる神林病院へ向かった。


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