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file6-3 ターゲット [同調(シンクロ)]

「地下の実験室」がある建物で、実験室に隣り合う部屋の中には、3人が椅子に座っていた。
シュンと名乗る「大男」、リュウと名乗る「痩せた男」、セイと名乗る「小柄な男」。

「次の獲物を用意しろってさ。」
シュンが電話を切ったあと、隣にいるリュウに吐き捨てるように言った。
「しかし、今、新しい獲物を見つけるのは難しいよ。市内あちこちに刑事が聞き込みに回っているんだから。」
「だが、会長の指示だ。・・何とかしないと・・・俺たちが、実験台にさせられる。」

この3人、男の格好をしているが、実は女性だった。男になりたい願望を由紀が美容整形手術で見た目には遜色ないほどに整形していたのだった。最初に、整形を受けたのは、シュンであった。生まれつき体格が良く、2メートル近い身長と広い肩幅にコンプレックスを持っていて、自ら志願して手術を受けた。他の二人も同様であった。しかし、普通の会社勤めが出来るはずもなく、由紀の紹介で、権田会長の手下として働いていたのだった。
「小柄な男」セイが口を出す。
「あいつに相談してみよう。・・・警察の動きもわかるだろうし・・」

シュンは携帯電話でどこかに電話をかけた。
「ああ、ユウか?・・また、会長から指示があった。次の獲物が欲しいんだが・・・」
電話口の向こうでは、大きななじる様な声が聞こえてきた。
「おい、いい加減にしろ!今、警察がどれだけ血眼になってるのか、わかってるのか?」
「警察の捜査が進んでるのは判ってるさ。だけど、それを抑えるのがお前の役目だろう。何とかしろ。」
「もう二人も死んでるんだ。これ以上はどうにもならん。」
ふたたび、怒鳴り声が響いている。
「うるさい。会長には逆らえないのはお前も一緒だろ。」
「くそっ!・・・どうすりゃいいんだ?」
「とにかく、獲物になる女を捜すんだ。」
「・・・そうだ、あいつはどうだ?ほれ、獲物を照会してくれてたあいつさ。・・ソフィアという女さ。」
「・・だが、今、警察の中にいるんだろ?」
「大丈夫さ。何とか連れ出せる。方法はある。」
「・・だが、あいつは仲間だぜ?」
「馬鹿言うな!あいつが、ユウキとか言う女のことを警察に通報したんだ。裏切ったんだ。多分、怖くなったんだろ。今のままじゃ、いつ、俺たちの事を話すか判らないぞ。」
「いや、あいつが知ってるのはお前だけだ。俺たちのことなんて知らないし、ましてや、この実験室の事もしらないはずだ。・・・まあ、お前の身は保障できんな。」
「いい加減にしろ。これまでどれだけ助けてやったと思ってるんだ。・・・お前たち、俺を捨てるつもりなら、俺にだって覚悟はある。」
「ほう、もう二人も殺しておいていまさら警察がお前の言う事を信じるとも思えんがな。」
「ふん。そういうこともあるだろうと思って、組織の事を林にもある程度教えておいたんだ。・・あいつの事だ、何かメモでも残してるだろ。・・まあ、いいさ。俺にだってそれなりの知恵はある。」
「わかった。ソフィアを連れ出して来い。とりあえず、会長はそれで納得するだろう。」
そういうと、電話を切った。

「あいつ、大丈夫か?」
リュウが少し不安げに訊いた。
「・・まあ、二人も殺したんだ。普通じゃ居られないだろ。俺たちを脅しやがった。」
「なあ、あいつも始末しないとやばいんじゃないか?」
「ああ、俺もそう考えてた。そろそろ、始末したほうが良いだろ。ソフィアを連れ出してきたら、一緒に始末するか。」
セイが口を出す。
「じゃあ、獲物はソフィアか。」
「・・ああ、だが、一時は、会長のお気に入りだった女だ。一応会長にも確認しておいて方がいいだろう。」

そんな会話の後、3人の「男たち」は、ユウを消す相談を始めたのだった。
怪しい夜は過ぎていった。

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