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file6-8 埠頭 [同調(シンクロ)]

一樹は、ソフィアの無事を祈りながら車を港に向けて走らせた。
駅前を抜けて、JRをまたぐ顎線橋を超え、ようやく埠頭に繋がる産業道路の交差点に到着したころ、携帯電話がなった。
「たぶん、コンテナはBエリアの51ブロックあたりよ。魁トレーディングが借りてる場所。」
藤原女史が港湾組合のデータベースからコンテナの場所を知らせてくれたのだった。

埠頭入り口には、港湾組合の係員らしき男が立っていて、門を開いて方向を指差して教えてくれた。
「だれか来た形跡はなかったか?」
「すみません。いつもは外国船が入港するので、ここに居るんですが、あいにく今日は入港予定がなくて、ほとんど休みになってまして・・ご案内します。」
「そうか。ありがとう。」
そう言うと、係員は一樹の車に乗り込んだ。
一樹は、助手席の係員の案内に沿って車を走らせる。
埠頭のコンテナ置き場はとにかく広い。一応ブロックごとに分かれてはいるが、何段にも積みあがっているコンテナのせいで、ほとんど迷路のようになっていた。

「エリアBの51ブロックってまだかい?」
「もうすぐです。そこのクレーンの脇を入った辺りからがエリアBです。・・あ、そこ右です。」
苛立ちながら一樹は、ハンドルを右に切る。タイヤがキュルキュルと音を立てた。

ようやくエリアBに到着した。人が通れる幅の通路を空けて、コンテナが積みあがっている。車を降りると、入り口の順に番号を確認していく。その時、一樹の携帯電話が鳴った。

「もしもし、一樹?」
電話の相手は亜美だった。何か途轍もなく切羽詰った声を出している。
「どうした?」
「あ・・あの、レイさんが・・」
「どうしたんだ!」
「あれからまたシンクロしたらしいの・・突然、発作が起きて、呼吸が止まって・・・今、蘇生の・・」
「大丈夫なのか?」
「判らない。でも、きっと、ソフィアさんの身に大変な事が・・」
その電話の声は震えていた。一樹はぐっと携帯電話を握り締めた。
「今、コンテナ置き場に居るんだ。だが・・どこか・・」
そう言って、一樹が辺りを見回したとき、一樹の居るコンテナの反対側で銃声が響いた。
「あとで電話する!」
一樹はそう言って、音がしたほうへ一目散に駆け出した。

音はすぐ近くで聞こえたはずなのに、茶色や黒のコンテナの隙間が迷路のように繋がっていて、なかなか出口が見えなかった。
「おい、もっと近道は無いのか?」
同行してきた係員に尋ねたが、係員も要領を得なかった。
「くそ!」
一樹は悔しそうに地面を蹴った。そして、周囲のコンテナを調べ始め始めた。どれも頑丈な鍵が掛かっていた。

さっきの亜美の電話から、ソフィアの危険は確実なものだとわかっていて、一樹は、そこらじゅうのコンテナの壁を叩き、ソフィアの名を呼んでは探し回ったがなかなか見つからなかった。少し奥まったところにある、緑色のコンテナのドアが少し開いていた。

一樹が走りよってみると、コンテナの中に誰か倒れていた。それは佐伯だった。コメカミから血が流れていて、右手には警察官に所持が許されている短銃が握られていた。すでに絶命していた。あたりを見回してみたら、ソフィアの姿は無かった。しかし、佐伯のとは違う血痕があちこちについていた。

「きっとソフィアはここで痛い目に合わされたんだ・・・くそ!何処に行ったんだ!」

コンテナから出たところで、一樹は頭に強い衝撃を受け倒れこんだ。
同行していた係員らしき男が、佐伯の持っていた短銃を片手にして、一樹を襲ったのだった。
横たわる一樹を足で蹴る様にして上向きにさせたところで、短銃を構えて一樹の頭を狙って撃った。一樹は寸でのところで、それをかわして男の足を蹴飛ばした。男はうろたえて、もう1発発射した。今度は、一樹の腹部に命中し、強い痛みで気絶してしまった。
男はその様子を見て、改めて、佐伯に短銃を握らせると、隠れていた仲間の車で悠々とその場を立ち去った。

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