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-帰還-12.砂鉄探し [アスカケ第1部 高千穂峰]

12.砂鉄探し
 アラヒコはミコト達を集め、カケルが見つけた「タタラ跡」や洞穴の話をした。長老やミコト達も、アラヒコ同様、ハガネを作る事には興味はあるものの、災いが及ばないかを心配していた。それでも、カケルとアラヒコが熱心に説得し、翌日からハガネ作りを始めることになった。
 カケルは、ミコト達を「タタラ跡」に案内し、アラヒコに話したのと同じ様に説明した。それから、洞窟にも案内した。
「実はな、カケル。我らもずっとこの場所を探して追ったのじゃ。じゃが、なかなか見つからなかった。・・いや、たとえ見つけても、ここがハガネを作る場所とは判らなかったであろう。・・お前たちの気持ちはよくわかった。今日から、皆で分担して、ハガネ作りを進めるのじゃ。」
長老がそういうとミコト達は、何組かに分かれた。ハガネの元になる砂を洞窟の中から掘り出すもの、タタラを修理し使えるようにするもの、火を作るために大量の炭を焼くもの、みなそれぞれに、自分の仕事の合間を縫って、ハガネ作りに励んだ。
炭焼きは、もともと、畑仕事の少ない冬場にやっていた。今年はいつもの年よりも大量に作る事になった。炭焼きは長老が中心になって進めた。
タタラ場は、ナギが中心になって、カケルが巻物に書かれている様子を教えながら、土を払い、中を掃除し、割れたところを塗りなおし、何とか使えるようにした。
一番、苦労したのは砂の採掘だった。まず、残っている洞窟に入り、中の様子を探った。アラヒコが中心になって、どんな砂を取っていたのかを検分した。松明を灯し、中を照らしてみたが、あちこちに掘った跡は残っていたものの、どんな砂なのか皆目見当がつかない。壁を少しずつ掘って、土を外に運び出し、日の光に広げてみた。
「ただの砂にしか見えないなあ。」
アラヒコは、ケラと呼ばれるハガネの元と運び出した砂を見比べながら、悪戦苦闘していた。
「カケルよお、一体、どんなものを探し出せばいいんだい?」
アラヒコは、タタラ場の支度をしているカケルのところにやってきて、訊ねた。カケルは、巻物を広げ、砂鉄というものの特長を教えた。
「黒い粒・・普通の砂より重い・・・ああ、水を使って選り分けるとある。掘った砂を水に流してみると判るかもしれない。」
「そうか・・水の流れか・・それなら、川へ運んでみるか。」
アラヒコは、掘った砂を竹籠に入れて川に運ぶ事にしたが、みたりの御川は、もう流れを止めていた。仕方なく、村に戻り、溜めておいた水を汲み、砂にかけてみた。一籠ほどの砂を流してみると、黒い砂粒がわずかに溜まった。
「これか・・・だが、これだけしかないのでは、使えないな。」
穴掘りに精を出していたミコト達も、取れた砂鉄の量を見て、大いに落胆し、その場に座り込んでしまった。
「昔の人たちが、掘りつくしたということかもな・・それで、ハガネ作りを止めてしまったということだろう。」
 そこに、村の仕事をしていたイツキがやってきた。
「どうしたの?・・もう、砂堀は終わったの?」
アラヒコは、掘った砂から取れた砂鉄を見せて、無理だろうと言った。
イツキは、その砂粒をじっと見つめてから、突然思い出したように言った。
「ねえ、この砂粒、見た事あるよ。・・・どこだったっけなあ。」
イツキは、くるりと身を返して、辺りを眺めながら記憶を辿っている。そして、
「あっそうだ。・・みたりの御川の下・・西の川に落ちるところに・・この黒い砂がたくさんあったわ。前に、カケルと魚取りに行った時だったはず。黒い砂に足をとられて転んだの。きっとあそこの砂と同じよ。」
イツキはそういうと、アラヒコをはじめ座り込んでいたミコト達を連れて、みたりの御川が西の川に注ぐ小さな滝口に向かった。
「ここよ。・・今は、御川の水がないから、ほら、ずっと奥までいけるでしょ。・ほらここよ。」
イツキは、滝口近くにまで進んで、足元を指差した。小さな滝口は今は枯れている。西の川へ注ぐあたりに、黒い砂がこんもりと溜まっていた。アラヒコは、その砂を一掴みすると、じっと見つめた。
「ああ・・確かに、さっきの黒い粒とそっくりだ。だが、どうしてここに?」
そこへカケルもやってきた。村に戻った時に、イツキがミコト達を連れて行ったと聞きやってきたのだった。
「おお、カケル。・・どうだ・・どう思う?」
カケルも、アラヒコと同じように、足元の砂を掬ってみた。そして、巻物を広げた。
「そうか・・きっとこれが砂鉄だね。ほら。」
そう言って、巻物を広げて、絵地図を指差した。
「巻物には、この村を中心にこのあたりの地を書いていて、タタラ場の跡も、洞窟も、温泉も、印がついていたんだ。そして、ここも、タタラ場や洞窟とおんなじ印がついている。・・たぶん、洞窟で掘った砂から砂鉄だけを取り出すために、御川の水を使ったんだ。・・そして、砂鉄だけがここに溜まったんだよ。」
「そういうことか・・なら、ここの砂を掘れば良いってことだな。・・冬には御川も水が枯れる。流れのある時に洞窟で砂を掘り、流れに溶かし、水が枯れてから溜まった砂鉄だけを集めたんだな。・・ふーん、そういうことか。よし、じゃあ、ここの砂を集めよう。」
これで、ハガネ作りに必要な材料が揃った。

砂鉄.jpg


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