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2-46 決着 [スパイラル第2部遺言]

2-46 決着
ミホはエレベーターへ向かった。そして、エレベーターの認証システムに、首から下げたオレンジのペンダントをかざすと、ドアが開いた。
「メビウスを破壊します。」
如月がミホに続いてエレベーターに乗り込む。純一の時にはエレベーターからガスが噴射されて入れなかったが、今回は何も起きなかった。
如月が、洋一に言った。
「みんなは逃げるんだ。」
そう言うと、ドアが閉まった。

ミカとミサは顔を見合わせた。
「どうする?」
「社長はまだラボの中なのよ。私たちだけ逃げるわけには行かない。何とかラボへ行かなくちゃ。」
それを聞いて洋一が言った。
「ラボは確か、南側にあったんだよな。」
「ええ・・・」
「きっとどこかに入り口があるはずだ。」
洋一はそう言うと、ミカとミサを連れて邸宅を出て、桟橋へ向かった。

ラボへ降りたミホと如月は、すぐにメビウスのカプセルのところへ行った。
「社長!」
カバー越しに、純一がシートで苦しそうにしている様子が見えた。カプセルの中は密閉されていて、メビウスが換気システムを停止させたせいで、酸素が少なくなっているのだった。
「何とかしないと・・・・」
如月は、ラボの中にカバーを壊せるものは無いか物色し、長い金属の棒を見つけた。それを使って、カプセルのカバーをこじ開けようとした。しかし、隙間がない作りでカバーは開こうとはしなかった。

ミホは、真っ先にコントローラーを手に取った。そして、メビウスの文字に触れ、パスワードを打ち込んだ。コントローラーの画面が黄色く変わり、システム表のようなものが映し出されている。
「自動停止装置を組み込んでいたはず・・・使えればいいけど・・・。」
ミホはそう呟くと、停止装置のプログラムを動かした。しかし、画面は赤く替わり、エラーを表示した。もう一度、同じ操作を繰り返した。しかし、結果は同じだった。
「愚かな奴だな・・・私がそのプログラムに気付かないとでも思っていたのか?・・・もはや、コントローラーは使えない。全てのシステムは私がコントロールしているのだ!」

「くそ!駄目だ!」
如月は手にしていた棒を投げた。
「社長!しっかりしてください!」
如月は、カバーを拳で叩いて、中にい居る純一に呼びかける。
純一が薄っすらの目を開き、僅かに、手を動かした。その動きは何かをひねっている様だった。
「ミホ、純一さんがこんな動きを・・・。」
如月はそういうと、純一の動きをまねて見せた。はっとミホは気付いた。そして、カプセルの後ろに回り、地下への通路扉を開くスイッチを探し、コントローラーをはめ込んだ。だが、反応は無かった。
「駄目だわ・・・」
ミホはそう言って、床に視線をやると、地下への扉が少し浮いているように見えた。すぐに駆け寄って、扉を見ると、扉には純一の服が挟み込まれた状態で完全には閉じていなかった。純一が万一の事を考えてやった事だった。
「如月さん、ここ、開けて!」
如月は、さっき投げ捨てた棒を拾い上げ、僅かな隙間に差し込んだ。力いっぱい差し込もうとしたがなかなか深くは入らない。ミホも手伝い強く押した。ガキっと鈍い音がして、扉の隙間に棒が入り、梃子の要領で持ち上げると、扉が蝶番から外れて取れた。
ミホは階段を転がり落ちるようなスピードで地下へ降りて行った。如月も続いて地下へ降りた。
「これがメビウスの本体か!」
如月は、目の前の光景に絶句した。心臓の鼓動のごとく、怪しい光を点滅させているメビウスが、奇妙な生き物のように感じられた。
ミホは、メビウスの脇をすり抜けて、奥の壁に張り付いて進んだ。奥にある、冷却装置のバルブを回す為だった。冷却水の注入を止めれば、メビウスはいずれ高熱で自ら崩壊するはずだった。バルブに手をかけ回そうとしたがビクともしない。それを見て如月がミホのところまでやって来た。二人で力を合わせて回そうとしたが、やはり動かない。
「バルブを閉じようと考えたのだろうが・・・無駄な事だ。・・すでに制御システムは破壊している。バルブを閉める事はできないぞ!それよりも自分の命の心配をするんだな!」
どこからかメビウスの声が響いたと同時に、バチッと青い閃光がして、二人は弾き飛ばされてしまった。バルブに強い電流が流れたのだった。
「如月さん!しっかりして!」
両手で強くバルブを握っていた如月が電流を強く受けて、大きく飛ばされ壁に打ち付けられ、気絶していた。
ミホは、ペンダントを握り締めた。
「これしかないわ。」
ミホは決意した表情で、メビウス本体が収まっている水槽の上へ、硬質ガラスのような水槽の脇にある配管を使い、ゆっくりと登って行く。
如月が目を覚ました。
「ミホ、どうする気だ?」
「本体にこれを差し込むの!これで本体が溶解を始めるわ。・・・早く逃げて!途轍もない熱が出るはずだから・・・。ラボに居ればきっと大丈夫。さあ・・行って!」
「しかし・・・お前は・・・。」
「いいの。これを作った罰を受けるわ。さあ、早く・・・溶解が始まればきっとカプセルも開けるはず。純一さんを守って!さあ、急いで!」
如月はミホの覚悟を受け入れるしかなかった。如月は急いで階段を駆け上がり、ラボへ向かった。
ミホがようやくメビウス本体の上部へ取り付いた。
「何をするつもりだ!」
メビウスの悲鳴のような声が響く。
「これで終わりよ!」
ミホは、オレンジ色の玉を握り締めて、そのまま、メビウス本体に身を投げた。

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