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32.説明 [AC30第1部グランドジオ]

ホスピタルブロックの中に入ると、フローラがベッドに横になっている。
そして、その脇にキラとガウラが立っていた。医療器具を使って、フローラの状態を診断しているようだった。
隣のベッドで横たわるプリムの横にハンクとアランが立っていて、フローラの診察の様子を見守っている。

ユウリは、そっとアランに近づき小声で言った。
「お兄さん、外は大騒ぎよ。」
「ユウリ、大丈夫だよ。心配ないさ。」
アランはユウリの肩に手を置いて安心させようとして答えた。
「女の人なの?」
「ああ、フローラという名らしい。」
ユウリは不安げな表情で、ガウラとキラを見つめた。

「ごめんね、ちょっとライブスーツを外してもらうわね。」
ガウラはそう言うと、ライブスーツの背中の箱にある小さなスイッチを押す。フローラの全身を覆っていたライブファイバーがシュルシュルと外れて小さな箱に収まっていく。
ベッドの上で、フローラは全裸になる。診察台の脇にいたキラが驚いて、目をそむけた。
診察台の上には全身を覆うようにシェルターカバーが掛かる。そして、一筋の光がゆっくりと頭の先から足先まで移動する。そして、フローラの全身の状態が解析されていく。
「大丈夫。どこも悪くないみたい。病気もないし、怪我もしてない。フィリクスの実を食べたから、水分や栄養も回復しているわ。だけど。まだ、脳が少しダメージを残しているから、意識とか記憶とかに障害が出ているようね。ゆっくり体を休めれば、徐々に回復するでしょう。それにしても、なんて美しい顔立ちをしているんでしょう。そして、均整のとれた理想的な体型。羨ましいわ。」
ガウラの美貌も素晴らしいものだったが、フローラはそれを凌ぐほどだった。
「この体格から見ると、おそらく10歳前後かしらね。まだ成長途中の様ね。きっと美しい女性になるでしょうね。」
ガウラはそう言うと再びライブスーツのスイッチを入れる。見る間に全身にファイバーが広がりスーツになった。
「キラ、もう良いわよ。」
ずっと視線を外していたキラを見て、ガウラは微笑みを浮かべて言った。
「それから・・彼女・・フローラっていうんだっけ?しばらくは、ここに居てもらいましょう。完全に意識が安定するまでは外に出ない方が良いでしょう。コムブロックの人も騒いでいるみたいだから、少し、落ち着かせないといけないしね。・・。」
「彼女の事をどう説明するんです?」
「そうねえ・・・どこから来たかは判らないけど、ちゃんとした人間だって伝えるしかないんじゃない?大丈夫、私が説明するわ。」
ガウラはそう言うと、ホスピタルブロックのドアを開けて外に出た。
外には、グラディウスを手にした男たちが集まって、今にもホスピタルブロックに押し行って来そうだった。
「どうしたの?」
ガウラはいつものように落ち着いた表情で男たちに訊いた。
「いや。あれは導師様にも判らない魔物に違いない。ガウラさんたちが食われたんじゃないかって・・・。」
それを聞いて、ガウラが声をあげて笑った。
「何言ってるのよ。あれはちゃんとした人間よ。今診断した私が言うんだから間違いないわ。それも絶世の美女。まだ少女だけどね、あと数年もすれば、素敵な女性になるわ。」
「本当か?・・じゃあ、近くに同じようなジオフロントがあるっていう事か?」
アルスが訊く。
「さあ、どうでしょう。どこから来たのかはわからないけど、病気も持っていない、ちゃんとした人間。健康そのもの。少し、意識と記憶に障害があるみたいだから、しばらくはホスピタルブロックで預かることにしたわ。キラたちは何も悪くないわ。浜で倒れていたらしいのよ。ほっとく事が出来なかったって。良いじゃない。許してあげて。」
ガウラの説明に、人々はとりあえず落ち着いたようだった。
ガウラは必要な事だけ話すとすぐにホスピタルブロックへ戻った。


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