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43.エリアキーパー [AC30第1部グランドジオ]

キラとガウラは、高度な医療器具の置かれている『治療室』らしき場所に入った。すると、治療室の奥に赤く塗られたドアが見えた。『危険』の大きな文字があり、そこが薬品庫だと判った。
ドアノブに手を掛けた時、いきなり、背後でモーター音が響き、二人を強いライトが照らした。暗闇を小さなライトを頼りに長時間過ごした二人は、強いライトで視力を奪われ、しばらく動けなくなってしまった。その間に、モーター音が二人に近づいてくる。ジオフロントの大半のエリアはエナジーシステムの故障で全く機能していないはずだった。だが、確かに何かが動いている。
「あなた方は誰ですか?」
人間とは違う、無機質な声が強い光の向こうから聞こえた。少し光に慣れたキラが、目の前に黒く大きな影が立っているのを見つける。ガウラもようやく視力が戻って来ていた。
「君こそ誰なんだ!」
キラが言うと、二人を照らしていたライトが周囲を照らす方向へ切り替わり、相手の正体がはっきりと見えた。そこに立っていたのは、大型のロボットだった。キャタピラを持つ下半身の上に、いくつもの腕が付いている。二人を照らしていた強いライトも腕の一つだった。
「私は、ジオフロントのエリアキーパーです。ジオフロントの掃除が仕事です。」
そう言われて、ロボットの構造に納得する。
「掃除と言っても・・もう、ここにはだれも住んでいないでしょう?」
キラが訊くと、エリアキーパーが答える。
「はい。300年ほど前、エナジーシステムが故障し閉鎖された後、最後のお一人を埋葬してから誰も住んでいません。」
「最後の一人を埋葬したの?」
ガウラが驚いて訊いた。
「はい。それが私の仕事です。ここに住んでいたすべての住人を一人一人埋葬しました。絶望し、自ら命を絶たれる方がほとんどでした。小さな子どもも数多くおられました。最後の方は、ジオフロント最後の統治者であり、閉鎖の決断をしたクライブント様でした。すべてを見届けられた後、自ら命を絶たれました。」
キラとガウラは、エリアキーパーからクライブントの名を聞いて、驚いた。
導師として崇められ、ライフエリアを守ってきたクライブントは、ジオフロントの最後統治者であったのだ。人類の未来を託して、非情なる決断をし、生き残った人々が道を誤らぬようにするため、導師となったのだと判った。
「クライブント様は、いつかライフエリアから勇者様が来ると言い残されました。」
「勇者が来る?」
キラが訊く
「あなた方は、ライフエリアからあの扉を開いてここまで来られたのでしょう。あなた方こそ、勇者様に間違いありません。扉にメッセージがあったはずです。あなた方は、ジオフロントを復活させる使命を負った方なのです。クライブント様は、勇者が来たなら手伝うよう指示されています。」
ジオフロントの復活、それは確かにキラたちの希望であった。だが、その前にライフエリアの延命が必要だった。そして、ここへ来た目的は、プリムの治療薬を手に入れる事。ジオフロント復活は、容易いものではない事もキラは知っていた。
「エナジーシステムが故障し、全ての機能が停止しているのに、なぜ、君は動いているんだ?」
キラは素朴な疑問を投げた。
「私の中に小さな地磁気変換システムがあります。カルディアストーンもほんの1gほど。それでも500年ほどは動ける設計です。300年ほどじっと動かずここに居ましたから、まだまだ充分に動けます。何をお手伝いしましょうか?」
エリアキーパーが事もなげに答えた。
「まずは、薬品庫よ。」
ガウラが言う。
「ホスピタルブロックの薬品庫はここ?」
「はい。その奥です。」
エリアキーパーはそう答えると、二人の間を縫ってドアの前に立ち、腕を器用に動かして開けた。そして、先ほどの強いライトで薬品庫の中を照らした。
天井まで棚で仕切られ、様々な薬品が収納されていた。
「強力な解毒剤が必要なの。ドラコの消化液で神経麻痺が起きている患者がいるのよ。」

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