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45.フローラの異変 [AC30第1部グランドジオ]

ライフエリアへの通路に到着した。帰りはハウスキーパーに乗って戻ったために、最初の予定の半分ほどの時間で済んだ。おそらく、ライフエリアに着くころには、まだ、皆、眠っている時間だ。
キラとガウラは大きな薬の箱を背負い通路への階段を上る。
「お気をつけて。・・それから、私にはクライブント様からいただいた名前があります。エリックと呼んでください。」
エリアキーパーはそう言って、二人を見送った。
外見はまったくの工作機械に様に見えるのだが、口調や考え方は妙に人間じみていた。
「エリックだって・・なんだかおかしなロボットね。」
通路を歩きながら、ガウラが思い出したように言った。
「ええ・・・ちょっとハンクに似ているみたいでした。」
「そうね・・力持ちだし・・真面目なところも・・・。」
目当ての薬を手に入れて、ガウラは少しほっとしていた。これで確実にプリムは回復するはずなのだ。
セルツリーに下りる階段に着くと、キラが先に降りて、コムブロックの様子を伺う。まだ、だれも起きていないようだった。すぐに、ガウラに知らせ、二人は静かにホスピタルブロックへ向かった。

二人が禁断のエリアから通路に戻ったころ、ホスピタルブロックでは、フローラに異変が起きていた。
夕食のあと、再び眠りに落ちたフローラが、急に苦しみ始めたのだ。
傍に居たCPXは、すぐにベッドサイドのバイタルモニターを確認した。血圧が上昇、体温も38℃を超え、脈拍も通常の倍程度まで増えている。そして、フローラは全身が痛いのか、手足を折り曲げた格好で苦しんでいたのだ。
CPXは、ガウラの姿に変身し、ベッドサイドですぐに鎮静剤を投与した。だが、すぐには、容態は変わらなかった。狭いベッドの中で、フローラは苦しんでいる。しかし、CPXにはそれ以上手当ての方法がなかった。
鎮静剤が幾分利きはじめたのか、フローラがうっすらと目を開けた。
「フローラ様・・大丈夫ですか?」
CPXはそう言うと、もとの球形に戻った。
「ガーディアンのCPX4915です。判りますか。」
CPXは呼びかけた。だが、フローラの記憶の中にCPXは無かった。フローラは、驚いて、目の前の球形をしたCPXを手で払いのけた。CPXは、ころころとベッドの下に転がった。
「・・キ・・」
何か、フローラが譫言を呟いているようだった。CPXが音声解析すると、小さな声で「キラ」と言っているように聞こえた。CPXはすぐにキラの姿に変身した。
「フローラ・・判るかい?しっかりするんだ。」
CPXはキラの声をコピーし、優しく言った。
フローラの表情が少し緩んだように見えた。だが、再び、もがき苦しみ始める。
「痛い!痛い!」
彼女はそう叫ぶと、腕や足の関節辺りを押える。
「鎮痛剤の方が良いようですね。」
キラの姿をしたCPXは、鎮痛剤を投与する。すぐに痛みが和らいできたのか、フローラは静かになって、再び眠りに落ちた。
「ガウラ様が申された通りだった。・・・」
CPXは、静かになったフローラのベッドサイドで、バイタルモニターをチェックする。驚いたことに、身長がぐんと伸びている。髪の毛も伸びているようだった。顔だちも変わってきている。
そこへ、キラとガウラが戻ってきた。
「薬は手に入ったわ。・・フローラの様子はどう?」
ガウラはすぐにフローラのベッドサイドに来た。
「え・・これがフローラ?・・一晩でこんなにも成長しているなんて・・・。」
ガウラは驚いた表情でバイタルモニターをチェックする。
「鎮静剤と鎮痛剤を投与しました。」
横でCPXが言う。

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