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46.コールドスリープ解除 [AC30第1部グランドジオ]

「停まっていた時間が急に流れ出して異常な速さで成長しているわ。・・ひょっとしたら、彼女の実年齢15歳まで成長が続くかもしれないわ。」
ガウラが心配そうな表情で言う。今のスピードなら1か月ほどはこんな状態が続くとガウラは続ける。
「ただ・・体は大きくなっても、知能がついていかないはず。脳へのダメージもどうなのか判らないし・・。心と体のバランスが崩れるかもしれないわ。・・キラ、やっぱり当分フローラをここで預かるしかないようね。」
キラは同意するほかなかった。たとえ、元気になっても、コムブロックの中で皆と一緒に穏やかに暮らせるとも限らない。いや、おそらく、受け入れてもらうには相当の時間が必要だろうと考えていた。それならば、ここでじっくり時間をかけて普通の暮らしができる条件を整える事が必要だと考えた。
「ガウラさん、お願いします。ライフエリアのみんなの事は僕が何とかします。それまでフローラをお願いします。」
ガウラも承諾した。
「さあ、次は、プリムの治療よ。CPX、コールドスリープを解除してここへ連れてきて。」
すぐにCPXがプリムを連れてきた。
ドラコの消化液による壊死は食い止められていたが、体温を徐々に上げていくにつれて、再び壊死が広がり始めた。
「一刻を争うわよ。さあ、始めるわ。キラ、手伝って!」
持ち帰った薬が投与される。10分、20分、時間の経過とともに、茶色に変色していた手足の先端が徐々に黄色くなり、血液の循環が始まった。
30分を過ぎた時、栄養剤と神経強化剤を投与すると、プリムの指先がピクリと動いた。
「キラ、もう少し体温を上げましょう。」
ガウラが言うと、キラがベッドの上部にセットした治療具の調整をする。
透明のカバーに覆われたベッドに横たわるプリムの体温が少しずつ上がっていく。呼吸と脈拍も次第に高くなる。
1時間ほどで完全に平常の体温と血圧まで戻った。
「あとはプリムが意識を取り戻すのを待つだけね。」
ガウラは一つ深呼吸をするとそう言って、椅子に座りこんだ。プリムに治療を始めて1時間ほどが経過し、昨夜から一睡もしていないこともあり、ガウラは疲れ切っていた。そのまま、椅子で眠ってしまった。
キラはしばらくプリムの容態を診ていたが、同じように、椅子に持たれた格好で眠っていた。
CPXはキラに姿を変え、ガウラを抱え上げて、ベッドに移動する。同じように、キラも抱え上げ、フローラの隣のベッドに寝かせた。早朝の静かな空間で、フローラ、プリム、キラ、ガウラの4人がベッドで眠り、それをCPXが傍で静かに佇んでいる。しばらくは静かな時間が流れた。

コムブロックに人々が集まってきて、朝食の準備が始まり、にぎやかになった。昨日の出来事は誰も口にしなかった。皆、複雑な思いを抱えていたのだろう。良いとか悪いとかいう事ではない。このジオフロント以外にも人間が居る事が判ったのは、皆に何か救われた思いを抱かせた。だが、外から現れたあの少女はここに居る人々とは余りにも姿が違っていた。透き通るような白い肌、赤い髪、青い目、か細い手足、どれを見ても同じ人とは思えず、それが不安を広げていた。救いと不安が入りまじり、言葉にするのが怖かったのだった。
ハンクとアランは、朝食を持って、ホスピタルブロックへ向かった。まだ、キラもガウラも静かに眠っていた。
「もう、戻ってきたのか?」
アランが驚いてCPXに訊いた。
「はい。明け方に戻ってこられて、すぐにプリム様の治療をされました。」
それを聞いたハンクは、プリムのベッドを覗きこんだ。
「おお!プリムが、・・プリムが!・・・治療は成功だったんだね!」
ハンクは半泣きでベッドを覗きこんでいる。
「あとはプリム様の意識が回復するのを待つだけだそうです。」
「良かったなあ!」
アランがハンクの肩を抱いて喜んだ。その声で、キラが目を覚ました。
「キラ!ありがとう!ほんとにありがとう!」
目を覚ましたキラを見つけて、ハンクが駆け寄って礼を言う。
「疲れてるだろう、まだ寝てれば良いさ。今日の仕事は俺たちがやっておくから・・。」
アランも喜んでいた。

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