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47.勇者の誓い [AC30第1部グランドジオ]

夕方近くまで、キラは眠っていた。少し前に、ガウラは目を覚まし、プリムとフローラの容態を診てから、自分のセルへ戻っていた。アランとハンクは、コムブロックで与えられた仕事をこなし、夕食をもって、再びホスピタルブロックに現れた。
「キラ、もう夕方よ。」
キラは、ガウラに起こされた。フローラはまだ眠っている。アランとハンクは、キラから禁断のエリアの様子を聞きたくてベッドサイドに座って待っていた。
目を覚ましたキラは、一通り、コアブロックやホスピタルセンターの様子を話した。二人は真剣な表情で話を聞いた。
「エリックというロボットが居たんだ。」
キラが口にすると、ガウラが突然笑い始めた。エリックとハンクが重なったに違いなかった。
「エリックは300年以上、じっと待っていた。最後の統治者、クライブントの遺言を守っていたんだ。」
「クライブントの遺言?」
アランが反応した。
「ああ、クライブント導師はジオフロントが閉鎖された時の最後の統治者だったんだ。その意思をコンピューターに残し、ライフエリアの人間が誤まった道へ進まないようにしたんだ。そして、クライブントは、エリックに勇者が来るのを待っているように遺言した。」
キラが言うと、アランは少し憂鬱な表情で言った。
「あの扉の張り紙もクライブントか・・・なんだか、遠い昔の亡霊に操られているみたいだな・・・。」
アランの言うとおりだった。
「そんな事よりも、まず、目の前の問題だ。ジオフロント復活は確かに大きな夢だが、まずはライフエリアの延命だ。エリックは、緊急用のエナジーシステムはいつ停止してもおかしくないと言っていた。ジオフロントのエナジーシステムも不具合が見つかってすぐに停止したようだ。・・時間がない・・・。」
キラは真剣な表情で言った。
「だが、カルディアストーンの在り処は判らないんだろう?」
ハンクが訊くと、キラは落胆した様子で答える。
「ああ・・そうなんだ・・・。オーシャンフロントが唯一の望みだったんだが・・・どこにあるのか・・」
「そうだったな。」とアランが言う。
「春が来れば、近くに現れるかもしれないんだろう?」
ハンクがわずかな望みをつなぐように言う。
「春を待つしかないか・・・。そうだな・・。その間にできる事をやっておこう。」
キラが言うとアランが訊く。
「できること?」
「まずは、フローラの事だ。しばらくはここに居るとしても、いずれみんなと一緒に暮らせるようにしなくちゃいけないだろ?・・それから、ライフエリアの寿命を話さなくちゃならない。きっとみんな、パニックになるだろう。クライブント導師の秘密、禁断のエリアの事・・・とにかく、ライフエリアのみんなに本当の事を知らせなきゃ。」
アランやハンクの頭にはライフエリアの皆の顔が浮かんでいた。今まで信じてきたものすべてを覆すような話を素直に聞き入れるとは思えなかった。クライブント導師の事だけでもかなりの困難が生じる事は明らかだった。
「できるかな・・。」
ハンクがぼそりと呟く。アランもキラも応えられなかった。
「やるしかないでしょ?もう扉は開かれてしまったのよ。あなたたちは勇者になるの!」
三人の様子を見ていたガウラが励ますように言った。
「勇者・・か・・・」
アランが呟く。
一部始終を聞いていたCPXがみんなの前に転がってきた。
「大丈夫です。私が必ずオーシャンフロントを呼び寄せます。フローラ様も、オーシャンフロントへお帰りいただかないとなりません。そうするのがガーディアンの私の使命ですから。」
「そうだな・・・どんなことがあってもやり遂げなくちゃいけないんだ。勇者の道を選んだのは自分自身なんだから。アラン、ハンク、ガウラさん・・一緒にやり遂げましょう。」
キラが力強く言った。

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