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52.CPXの力 [AC30第1部グランドジオ]

「ハンク!」
不意にキラが呼んだ。呼ばれたハンクは驚いて転びそうになる。
「ハンク、CPXをここへ連れてきてくれ!」
再びキラが叫ぶ。ハンクは慌てて、ホスピタルブロックへ飛び込んで、フローラのベッドサイドに居たCPXを両手で抱えて出てきた。そして、キラの許へやってきた。
キラは、CPXを脇に置いた。
「そのボールみたいなものは何だ?」
怪訝な表情を浮かべて、アルスがキラに訊いた。
「これはCPXです。あの少女、フローラをあの浜まで運んできたのです。」
キラの説明では皆は理解できなかった。
「そんな小さなボールの中に居たというのか?」
「いえ・・そうだ。CPX、変身してくれないか?」
キラが、CPXに向かって言うと、アルスが可笑しな顔をして、「キラ、大丈夫か?」と言った。
「大丈夫です。さあ、CPX、頼むよ。」
キラが再びそう言うと、キラの脇の床に置かれたCPXが白く光り始め、急にぐんと縦に伸びた。そして、再び小さくなったと思うと、人間のような形に変形した。さらに、細部まで変形が進むと、キラとそっくりになった。
「キラが・・二人になった・・・・。」
見守っていた住民全員が驚いた。
「CPXは、アンドロイドなんです。自在に変形します。こんな風に人間そっくりにも変形できる。・・CPX、もう良いよ。元に戻ってくれ。」
その声とともに、声の主であるキラが、丸いボール状に戻ってしまった。
人々は再び驚いた。
「今のは、CPXの悪戯です。人間以上の知識もあるし、人間を守る事を使命としています。彼とともにカルディアストーンを探しに行きます。彼がいれば、シェルター代わりになり、酷暑も極寒の季節でも耐えられるでしょう。心強い味方です。これで遠く、どこかにあるはずの別のジオフロントを捜し出し、カルディアストーンを手に入れてきます。」
キラが自信を込めて、クライブントに向かって言った。すると、脇に居たCPXが言う。
「キラ様、それは無理です。私はフローラ様のガーディアンです。フローラ様の傍を離れるわけにはいきません。」
「これは、フローラの為にでもあるんだ。彼女がここで生き延びるためには、ライフエリアが存続しなくてはならないだろう?そのためにはどうしてもカルディアストーンを手に入れなければならないんだ。頼む。手伝ってくれ。」
キラが言うと、CPXは「判りました。仕方がありません。」と承諾した。
それを聞いていたクライブントが言う。
『判った。そのアンドロイドがどれほどの力を持っているかは判らぬが、キラとアランはカルディアストーンを探し出さねばならない。行くが良い。だが、歩いて辿りつけるほど近くにはないだろう。・・・一つ、手助けしよう。ジオフロントにいるエリックに命じて、アラミーラを取り寄せなさい。きっと役に立つだろう。成功を祈っておるぞ。』
そう言うと、ビジョンは真っ暗になった。
集まった住民たちは、じっとキラとアラン、CPXを見つめたままだった。
「導師の言われる通り、キラとアランに未来を託すほかないようだ。」
アルスが口を開いた。人々は、顔を見合わせる。余りに深刻な真実を突き付けられ、まだ、信じ難い心境であった。だが、事実である。
「ああ・・そうするほかなさそうだ。」
誰かが言うと、皆が頷いた。それを見て、キラが言った。
「・・必ず、カルディアストーンを見つけて戻ります。いや、命に代えてもここを守ります。」
その言葉に、皆から拍手が起こった。キラは続けた。
「ひとつだけ・・皆さんにお願いがあります。フローラの事です。彼女は、はるか遠くのオーシャンフロントから脱出してきました。まだ、意識がはっきりしないほど大変な旅を経てここへ流れ付いたのです。もう二度と戻る事は出来ないでしょう。ですから、どうか、ここで、皆さんと一緒に、幸せに暮らせるようにして下さい。」
再び、大きな拍手が起きた。
こうして、キラとアランは、CPXとともにカルディア・ストーンを探す旅に出る事になった。

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