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3‐31 命の正体 [AC30 第3部オーシャンフロント]

その部屋は、細長くいくつもの小さな仕切りが入っていた。そして、その仕切りごとに、先ほどの部屋にあったような『卵』状のものが置かれている。先ほどと違うのは、その『卵』の中にいるのは、紛れもなく、創造主だったからだ。いや、フローラやステラとも言える。大人の女性が『卵』の中で眠っている。
『卵』の中の女性の背中には、太い管が繋がれていて、何かがそこを通じて取り出されているようだった。その管は、天井や床に張り巡らされていて、先ほどの部屋とつながっているように見えた。
「ねえ、これって・・・。」
「ああ、ここが創造主のクローンを作り出す部屋なんだろう・・・。こうやって、カルディアは自らのクローンを作り出し命を繋いだ。これが、永遠の命の秘密なんだ。」
キラの言葉は、フローラもここで作り出されたクローンだということを決定づけた。
一つ一つの『卵』の中の女性は少しずつ年齢が違って見える。中には、顔中皺だらけの女性もいた。
「完全体を求めているはずだ・・・ここにいるのは、パトリの女性たちだろう。」
そう言いながら、先へ進んだところで、フローラが「ヒイ」と小さく声を上げた。
「どうした?」
フローラが震えながら、そっと指差した。その『卵』の中には、女性ではなく、男性の姿があった。『卵』を包む膜越しにぼんやりとしか判らないが、それは、ハンクの姿だった。
「ハンク!」
キラが膜越しに叫ぶ。だが、中の男性は反応しない。
「どうして、こんなことに・・・。」
キラは、『卵』からハンクを救い出さねばと、必死に、『卵』を叩いたり蹴ったりして、膜を破ろうとした。だが、丈夫な膜は少しも傷つけることができない。グラディウスがあれば容易に切り開くことはできただろう。それでも、繰り返し繰り返し『卵』に挑んだ。
「ハンク!ハンク!目を開けろ!ハンク!助けてやるから!」
それを見ていたフローラが、その隣の『卵』を見て、さらに大きな声を上げた。
「プリムか?」
フローラの声に気づき、キラが隣の『卵』を見た。
プリムの姿があった。その隣にも、ジオフロントの仲間たちの姿が並んでいる。皆、男性ばかりだった。
「どうしてこんなことに・・・。」
キラは落胆し座り込み、天を仰いだ。しばらくして、急に思い出した。
「フローラ!ここには、サラやユウリも、一緒に来たんだよな?」
キラの妹サラやアランの妹ユウリは、故郷に戻るフローリアに付き添うように、ここへ向かったはずだった。
「ええ・・私と一緒にここへ来たはずです。ただ、その時のことははっきりと思い出せないんです。ジオフロントを出るところまでは思い出せたのだけど・・途中から曖昧で・・・。」
「サラたちはどこにいるんだろう?」
タワーの中は、階層に分かれたカルディアのクローンたちが居たが、他の女性は見なかった。タワーの外や地下深くに囚われているのではないかと考えながら、目の前の「ハンク」を再び見た。
「なんだろう・・どこか・・違う・・。」
キラは呟きながら、隣の「プリム」を見る。
「やっぱり・・何かが・・違うような・・・。」
「どうしたの?」
フローラが尋ねる。
大切な友の変わり果てた姿を見て、認めたくない気持ちが勝って、目の前の現実を受け入れたくないという気持ちがそう思わせているのではないか、キラはそう思いながらも、やはり何か違和感が拭えなかった。
「いや・・はっきりとは判らないが・・ここにいるハンクやプリムはどこか違うような気がするんだ。・・」
フローラはキラの言葉に戸惑いながら、ハンクの姿を見たが、やはり判らない。
キラは、フローラの姿を見て、はっと気付いた。
そして、薄い膜の中に浮いている「ハンク」の姿に目を凝らした。

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