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3‐32 破裂 [AC30 第3部オーシャンフロント]

「やはり・・そうだ・・これはハンクじゃない!」
キラは確信をもって言った。
「見てくれ、フローラ!」
そう言って、キラはハンクの右腕を指差した。
「僕たちは、ハンターになる時、証として、ここにタトゥを入れるんだ。ほら。」
そう言って、ライブスーツの腕を捲りあげる。
そこには、黒い小さなペンタゴンの形のタトゥがあった。
「ここにいるハンクには無いんだ!きっと、これはハンクじゃない!クローンだ!きっと、ここにいるみんなはクローンに違いない。理由は判らないが、ジオフロントの人間のクローンを作ろうとしているんだ。」
「じゃあ、みんなは?」
「きっとどこかにいる。探さなくちゃ。」
キラは出口を探した。だが、細長い部屋の中、出口らしきものは見当たらない。
「よし、ここを破壊して外に出よう。」
キラは、ニコラにもらった小さな箱を取り出した。
投げつけると爆発すると聞いた。どれほどの威力があるのかは判らない、だが、これしか方法はなかった。
「フローラ、下がってて。」
キラは、『イグニス』を強く握りしめた。赤い光が広がる。ぐっと強く握り締める。さらに光は強くなる。
「よし!」
そう言って、キラが投げつけようとした時、フローラが叫ぶ。
「待って、キラ!」
振り返ると、細長い部屋の両脇の壁にあった『卵』の様子が変だった。
ぶくぶくと泡立ち、膨らみ始めている。キラの目の前にある『卵』は倍近くに膨らみ、中は白く泡立ち沸騰している。卵の中にクローンたちも、赤黒く変色し膨らんでいる。小さな箱が発する赤い光が、何らかの作用を起こしたようだった。
キラは、さらに強く箱を握りしめる。
赤い光はさらに強さを増し、部屋全体がグニャグニャと生き物のように動き始めた。
膨張を続ける『卵』と変形する部屋の壁、徐々に、空間が無くなってくる。キラとフローラは、わずかな空間に身を寄せる。キラは握っていた手を緩めても、箱の光は強さを保ったままだった。いよいよ息をするのも難しくなった、意識が徐々に遠のいていく。
「ドーン!」
巨大な風船が破裂したような轟音と共に、細長い部屋は破裂し、二人は暗い空間に投げ出された。
キラはフローラの体を抱きしめたまま宙を舞う。
ドンと床に落ちた衝撃を感じた。だが、それは柔らかく痛みなどなかった。
「大丈夫か?」
キラが横たわったまま、フローラに訊いた。
「ええ・・大丈夫・・・」
真っ暗な空間、どれほどの空間なのか全くわからない。周囲には、先ほどの細長い部屋や『卵』の残骸があるはずだが、暗闇で全く見えなかった。
横たわったまま、遠くに視線を遣ると、前方、いや、天井あたりからか、灯が見える。
「あそこは、タワーの最上部だろうか?」
そう呟きながら、灯を見ていると、それは徐々に大きくなってきているように見えた。そして、その灯の周囲には、赤い光が点滅している。徐々に暗闇に目が慣れてくると、それが、あの、創造主のドームであることが分かった。そして、赤い点滅する光は、PCXの集団だとも判った。
「フローラ!隠れよう。」
キラは、抱きしめたままのフローラに言う。だが、周囲の様子が判らない。
降りてくる灯で、少し周囲が見えた。破裂した部屋の残骸が見えた。すぐに、二人はその下に身を隠した。
ドームはゆっくりと降りてきた。そして、ひときわ眩い光を発し、暗闇の空間を照らした。おそらく、破裂した部屋の様子を探っているに違いない。

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