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3‐33 カルディア [AC30 第3部オーシャンフロント]

創造主のドームが床に着いた。ドームの幕がゆっくりと開き、創造主カルディアが姿を見せた。
その周囲をPCXが護衛しているように、宙を舞う。
「姿を見せよ!」
カルディアの声が響く。球形のPCXが飛び回る。キラは、箱を握る。
1体のPCXが、キラたちの所在を突き止めた。そして、いくつものPCXが集まってくる。身を隠していた部屋の残骸がふわりと持ち上がり、床にうずくまっていた二人の姿にライトが当たる。
キラは、ぐっと箱を握りしめる。だが、赤い光は発しなかった。
「無駄じゃ。ここでは、それは使えぬ。」
その言葉と同時に、PCXが人型に変形し、キラとフローラを取り巻き、拘束する。そして、そのまま、ドームの前に連れて行かれた。
「お前は何をしたのか判っているのか?」
カルディアの声は、重々しく部屋の中に響く。
「永遠の命の正体を破壊した!」
キラが言う。
「そうか・・・判っていたのか・・。」
「これでもう永遠の命など存在しなくなった。お前の支配も終わりだ!」
「それはどうかな。」
そう言って、カルディアが手を上げる。
すると、真っ暗な空間に灯がついた。
広大な空間には、周囲に袋のようなものが幾つもある。よく見ると、その一つが粉々に砕けている。
「お前が破壊したのは、ほんの一部に過ぎぬのだ。・・それとも、これをすべて破壊できると思っているのか?」
余裕綽々の表情でカルディアが言う。
「お前の持っている『箱』はすでに力を失っているだろう。これ以上、抵抗などできぬのだ、諦めよ。」
キラは拳を握り締める。
だが、PCXに押さえつけられ身動きできない。
「キラよ、ここで生きる道を選ぶが良い。」
「いやだ!ジオフロントへ戻る!ハンクたちを返せ!」
「まだそのようなことを・・・愚かな事よ。ここでの夢のような暮らしをお前も満喫したであろう。お前さえ、承諾すれば、ジオフロントの者たちにも、同じ暮らしが待っておるのだぞ。皆の幸せの為にも、承諾せよ。」
カルディアの声は少し和らいでいる。
「ここには、本当の暮らしなどない!」
「そうか・・・まあ良い。すでにお前の命は我が手中にある。PCXですぐに消去することもできる。選ぶなどという言葉は不要だったな。さあ、連れていけ。」
「待て!フローラはどうなる?」
キラが訊く。
「フローラ?・・・ああ、こいつか?これは不完全体だ。生存する人類を発見するための仕事は果たしたが、そこでの記憶を消せなかった。そのようなものは不要なのだ。すぐに処分すべきだった。」
自らのクローンであるはずだが、まるで物を扱うような言い方だった。
「止めろ!判った。お前の言うとおりにする。だから、フローラを殺すのはやめてくれ。」
「これはクローンの一つに過ぎぬのだぞ?命乞いなど意味のない事ではないか。」
「確かに、クローンとして生まれたんだろう。だが、ジオフロントでともに過ごした。その記憶こそ、人間の証なんだ。もはやクローンではない。フローラは一人の人間になったんだ!」
フローラはキラの言葉を聞き、胸を熱くした。
「フローラを殺すというなら、おれも一緒に殺せ!」
「滑稽だ。先人類は、クローンを忌み嫌い、阻害し、殺戮しようとした。だが、どうだ?そのクローンこそが地球上で生き延びた。永遠の命となり、今、こうして支配しているのだ。・・・・まあ良い。フローラを処分することはいつでもできる。しばらくは猶予してやろう。さあ、連れていけ。」
キラとフローラを拘束していたPCXの一体が大きな袋状に変形し、二人の体を包みこんだ。

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