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3‐34 囚われの身 [AC30 第3部オーシャンフロント]

キラとフローラは、PCXの袋に囚われたまま、どこかに連れ去られている。外の様子は全くわからない。ただ、タワーの上層へ連れて行かれるようではなかった。
PCXが動きを停めた。するすると袋状のPCXが開くと、目の前にベッドが並んでいるのが見えた。どれも大きなカバーがあり、その表面にはいくつもの光が点滅している。
「さあ、歩け!」
人型に変形したPCXが二人を囲むようにして歩かせる。
ベッドの並ぶ通路を通る。その時、カバーの中が見えた。サラの顔がのぞいている。隣にはユウリが居た。二人とも眠っているようだった。
その先には、カバーの開いたベッドが置かれている。
「さあ、ここに、横になるんだ。」
「フローラは?」
キラがPCXに訊いた。そのPCXは少し返答に時間が掛かった。
「フローラ・・は・・・不完全体だから・・・。」
そこまで言って、何か不具合でも生じたのか、赤い光が弱くなり、停まってしまった。
「どうした?」
すぐに光が戻り、「隣室に留置する。」と答えた。ここで抵抗しても無駄なのはだと判っていた。キラはおとなしくベッドに横たわった。ベッドのカバーが閉じられた。
PCXはフローラを連れて、隣室に消えた。

静かだった。ベッドに入れられ、何かされるのを覚悟していたが特に何も起きなかった。ここにはきっとジオフロントの仲間たちが居る。どうにかして、皆を解放できないか、キラはそればかり考えていた。しかし、自分自身、ベッドに入れられ身動きできない。どうにもできない自分が悔しくて、思わず、目の前のカバーを叩いた。
「ブーン」
静かなモーター音とともに、カバーが開いた。驚いた。どういうことだろう、何か試されてるのだろうか?だが、今のキラにはそんなことよりもここから出て皆をどうにかして解放することを選んだ。
すぐにベッドから降りた。そして、ベッドの下を這うようにして部屋の中を移動し、隣室のドアのところまで行った。ドアノブに手をかけると、鍵はかかっていない。静かに開くと、中にはフローラが蹲っていた。
「フローラ!」
小さな声でフローラに声をかける。フローラは顔を上げ、驚いている。キラが手招きすると、そっとフローラが出てくる。
「どうして?」
囁くようにフローラが言う。
「判らない、ベッドのカバーもこのドアも鍵がかかっていなかった。」
「どうしてかしら?」
「判らない。とにかく、これで動ける。皆をどうにか解放しなければ。」
そう言って、また、ベッドの影に隠れるように這いつくばって部屋の中を移動した。
「どこかに、カバーを開くスイッチがあるはずだ。」
サラが眠っているベッドに取りつくと、カバーのあちこちを探る。ボタンらしきものはない。フローラはハンクのベッドを見つけ、同じようにスイッチを探した。フローラの手が、カバー上部の星の模様に偶然触れた。
「ブーン」というモーター音がしてカバーが開いた。
「ハンク!ハンク!」
その声を聞いて、キラも急いでやってきた。
「ハンク、起きろ!」
何か薬のようなもので眠らされているのか、なかなか目覚めない。
「フローラ、どうやって開いた?」
「この模様の上を触ったの。」
キラが触れても変化は起きない。フローラが触れると、先ほどと同じ様に、カバーが開く。プリムだった。


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