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3‐36 決行前夜 [AC30 第3部オーシャンフロント]

ニコラは、皆を集めた。
「これまで長い時間をかけて準備をしてきた事がいよいよ花開く時が来た。カルディアを倒し、オーシャンフロントを我らの手に取り戻すんだ!」
体力が戻ったハンクやプリムも、キラとともに話を聞いた。
「永遠の命を作り出しているクローンシステムの場所は判った。そこを破壊する。永遠の命の元を絶てば、カルディアは自滅する。」
それを聞いて、キラが言う。
「あれだけ大規模なものを破壊するには時間が掛かる。すぐに、PCXが来て反撃されるのではないですか?」
ニコラがニヤリと笑み浮かべて答える。
「そのために、オーシャンフロントのエナジーシステムを一時的に遮断する。そうすれば、しばらくの間、我らがあの空間に侵入したことは察知されないはずだ。」
オーシャンフロントのエナジーシステムのすぐ近くに、ダモスエリアはある。長年の努力で、エナジーシステムのコントロールルームを突き止めていたのだった。
「それに・・。」
ニコラが話を続ける。
「この日のために、ドロスたちとの同盟も結んでいる。彼女たちが盾になりPCXの攻撃を防ぐことができる。」
「そんな・・・。」
フローラが呟く。
「もうすでに動き始めていますよ。」
後ろで声がした。そこには、車椅子に座った女性が居た。キラがドロスの住居で出会ったエルピスだった。キラが運ばれ介抱されたあの住居はPCXによって「消去」されたはずだった。
「どうして・・。」
キラが呟く。エルピスは集まった者たちの間を抜け、ニコラの元へ行く。途中、キラを見て微笑んだ。
「あの空間からの逃げ道は、私たちドロスが案内します。複雑な通路を作った甲斐がありました。例え、PCXに発見されても捕まりはしません。それに、私たちが皆さんを守ります。私たちドロスも、カルディアの遺伝子を持っています。PCXは安易には攻撃できません。」
ニコラが続ける。
「カルディアを倒さない限り、我らに未来はない。キラ、君たちも、彼女がいる限り、ここから脱出することはできないのだ。ともに戦おう。」
今、できる最上の方法に違いなかった。だが、計画通りにいくのだろうかとキラは疑問を持っていた。
タワーの中で見た、彼女の能力は計り知れなかった。すでにダモスやドロスの動きを掴んでいるかもしれない。いや、きっとすでに何らかの手を打っているに違いない。だからと言って、さらなる計画は思い浮かばない。
「おい、キラ、やろうぜ。俺、早くジオフロントに戻りたい。」
隣にいたハンクが言った。プリムも同じ表情でキラを見ている。
「そうだな・・ここを出ない限り、未来はない。やろう。」
決行は翌朝と決まった。
それまでの間、それぞれ与えられたセルで夜を過ごした。

フローラは、キラと一緒のセルで休んだ。
キラは、セルの隅で横になって、あのベッドの並んだ部屋の事を思い出していた。
どうして、ベッドのカバーが簡単に開いたのか、そして、フローラが閉じ込められていたはずの部屋の鍵が開いていたのか、逃げ出すことができるよう、準備されていたとして思えなかった。
だが、何のためなのか。カルディアが、何かの策を講じていたのか、カルディアの策であれば、何が目的なのか、疑問は膨らむばかりだった。そして、ダモスによるオーシャンフロント奪還の作戦が危ういのではないかと思い始めていた。


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