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3‐37 決行の日 [AC30 第3部オーシャンフロント]

翌朝、目覚めると、ダモスの男たちはすでに身支度を整えていた。武器になるのは、あの『イグニス』だけ。
「この日のために、皆で作ったんだ。」
『イグニス』が並んだ机を眺め、ダモスの男が誇らしげに言った。
「一人ひとつ、持っていく。使い方は判っているだろう。」
ニコラが、机の前に立ち叫んだ。キラやハンクも一つずつ持たされた。
「あの部屋に行き、ひとつ残らず破壊する。そして、カルディアの永遠の命を絶つ。」
皆、神妙な顔でニコラの言葉を受け止めている。
キラは、昨夜、頭の中に浮かんだ疑問が晴れないままだった。
「どうした、キラ?」
ハンクは、キラが浮かぬ顔をしているのに気付いて、訊いた。
「いや・・何でもない。・・俺たちも、ジオフロントへ戻るために働こう。」
「ああ、そうだな。」

男たちは、次々に、昨日、抜けてきた穴にもぐりこむ。キラたちも後に続いた。
狭い通路を黙々と進む。先頭がようやく、あの暗い空間に到達した。
静かだった。
全員がそれぞれ破壊すべき『袋』のようなものに取りついた。
「準備はいいか!」
ニコラの声が部屋に響く。
「おおー!」
男たちが呼応する。
『イグニス』を強く握りしめる。オレンジの光が発するはずだった。だが、どれ一つ光を発することはない。
「これは・・いったい・・。」
ニコラは、信じられないという表情を浮かべていた、すぐに気を取り直して叫んだ。
「投げつけろ!」
男たちは力いっぱい投げつける。だが、『イグニス』は爆発せず、床に転がった。ダモスの男たちは、転がった『イグニス』を拾い上げ、何度も何度も投げつける。だが、何も起きなかった。
天井から、赤く点滅する光の集団がゆっくりと降りてくる。攻撃色になったPCXの集団だった。そして、カルディアのドームもすぐあとをゆっくりと降りてくる。
抵抗する術を持たないダモスの男たちは、その光をただ見つめるだけだった。
「愚かな者たちよ。」
ドームの中から、カルディアの声が響いた。
赤く点滅するPCXが、ダモスの男たちの周りを飛び回り、次第に、暗い部屋の中央に集められる。
「そんな稚拙な道具で永遠の命を絶てると本気で考えていたのか?・・・愚かなことよ。」
静かにドームの幕が開き、カルディアが姿を見せた。
「ここは命の泉。すべてのエナジーがコントロールされている。破壊しようとするものは力を失うのだ。」
もはや抵抗する術などない。力なく、男たちは床に座り込んだ。
キラの予感は当たった。ふと、昨日の疑問が浮かんできた。
「カルディア、訊きたいことがある!」
キラが叫んだ。カルディアは、キラのほうを向き、睨みつけて言う。
「まだ、生きていたか。・・。」
「ここから、逃がしたのはお前の策略か?こうして攻撃させるためのきっかけを作ったのか?」
カルディアが訝しげな表情で答える。
「妙な事を訊くものだ。お前は、フローラに助けられここへ逃げ込み、そしてダモスに助けられたのであろう。」
「本当にお前の策略ではないのだな?」
「それを確かめて何になる?」
カルディアの言葉を聞いて、キラはハッと思いだした。

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