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3‐39 虚構の平和 [AC30 第3部オーシャンフロント]

PCXが次々に破壊されていく音が穴の中に響く。ダモスの男たちやハンクたちは奥へ奥へと逃げる。その先に、ドロスの女性たちが待っていた。ドロスの円筒状の住居に引き上げたところで、ようやく一息ついた。
「一体、何があったのですか?」
ドロスのリーダー、エルピスが青ざめた表情で、ニコラに訊く。
「罠だった。・・・我らをあそこに迎え入れ、捕獲しようとしたのだ。」
ようやくニコラも、事態が理解できたようだった。
「だが、キラの機転で乗り切った。まさか、PCXが味方になるとは・・・現れたカルディアは、目の前で死んだよ。しかし、あの部屋を破壊することはできなかった。それどころか、あのカルディアのドームが攻撃をしてきたんだ。PCXはほとんど破壊されただろう・・・。」
それを聞いて、エルピスが言う。
「では、すぐに次のカルディアが現れるでしょうね。」
「ああ・・・事態は何も変わっていない・・・。」
ニコラは悔しそうな表情を浮かべている。
「キラ?・・あれ?・・フローラもいないぞ。」
ハンクが周囲を見回して言った。
「あのPCXも居ないな。」
プリムが言った。

そのころ、キラとフローラ、そしてフォルティアは、別の穴に隠れて様子を伺っていた。
PCXの爆発音がひとしきり響いた後、静かになった。
「フォルティア、ありがとう。助かったよ。」
キラは、様子を伺いながらPCXに言った。
「いえ、キラ様が私の名を呼んでくださったので、うまくいきました。」
「どういうことだい?」
キラが訊くと、フォルティアが答える。
「ジオフロントを出発する前、エリックに頼んで、別の回路を取り付けてもらったのです。特別な言葉に反応し、カルディアの支配から解放されるプログラムが入っています。そして、私たちPCXはすべて繋がっていますから、私のプログラムが他のPCXにもインストールされたというわけです。」
「それで・・名前を・・。」
「はい。キラ様を信じておりました。」
キラは、感情のないはずのアンドロイドが、「信じる」という言葉を使った事には驚いた。
「この先、どうなる?」
「すぐに、新たなカルディアが選ばれるでしょう。そして、PCXも新たに大量に作られるに違いありません。」
「何も変わらなかったということか・・・。」
キラは落胆した。
「いえ、違います。あと少しなのです。先ほどのカルディアをご覧になったでしょう。」
「ああ・・目の前で死んだようだった・・。」
「クローンを作り続け、永遠の命としてきましたが、綻びが大きくなっているのです。完全体は数少なく、寿命が極端に短くなっているのです。もはや、遺伝子が傷つき、完全体を産みだす事も容易ではなくなっているはずです。」
外に様子を伺いながら、キラは重ねて訊いた。
「この先、どうなる?」
「別の方法を探しているのです。オーシャンフロントの新しい支配者を作り出そうとしているのです。そのために、フローラ様の様に、海を漂流させて人類の生き残りを探していたのです。私は、ここへ戻り、全てのメモリーが開放され、自分の使命を知りました。ジオフロントを発見し、優良な遺伝子の持ち主を探し出し、ここへ連れてくるのが、本当の私の使命だったのです。」
「では・・。」
話を聞いていたフローラが口を開いた。

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