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3‐43 記憶 [AC30 第3部オーシャンフロント]

「いや、ステラだろう?」
キラはそう言って、『カルディア』の目の前まで近づいた。
「それ以上、近づくな!下がれ!」
明らかに動揺している。
「生きていたんだね。良かった。・・・もう良いんだ。君はカルディアじゃない。ステラなんだ。さあ、そこから降りておいで。」
キラはさらに近づいて、そっと手を伸ばす。
「止めろ!近づくな!」
わずかに、抵抗する素振りを見せたが、キラの手が、『カルディア』の腕を掴むと、『カルディア』は、体をふらつかせて、キラの胸に飛びこんだ。
「やはり、ステラだったね。本当に良かった。タワーの上から落下した後、どうなったか、心配していたんだ。」
ドロスの住居に匿われた時、エルピスから、古い言い伝え・・パトリの肉を食べると永遠の命を授かる・・を聞いて、ステラはすでに命を落としているのではと心配していたのだった。
もはや、『カルディア』に選ばれたステラは、その意思を失っていた。選ばれてまだ時間が経っていない。彼女の中には、キラとの記憶がわずかに残っていたのだった。
「さあ、これで、本当の敵がはっきりした。」
キラはステラをフローラに預けて、再び、アルコーンと対峙した。
『戦うというのか?』
アルコーンから声がした。おそらく、それは、はるか昔に死んだはずの、カルディアに違いなかった。
「ああ、オーシャンフロントを人類の手に取り戻す。」
『どうやって私を倒すつもりだ?この部屋では、あの小さな武器など、役に立たぬぞ。』
「判っている。」
『まさか、そのPCXが戦うのか?・・無駄だと判っているであろう。』
「やってみなければ判りませんよ。」
PCXが声を発した。
『そうか。では試してみるが良い。』
アルコーンは、ゆっくりと上昇し、怪しい光を点滅させた。そして、閃光が走ると、横たわったクローンの亡骸が一瞬で消えた。強力な破壊力を持った光だった。
「よし、行くぞ。」
キラはPCXに合図した。
「はい。」
球形のPCXは、キラとともに、閃光を避けるように、右へ左へ走りながら、アルコーンの真下へ入り込んだ。
「本当に良いんだな?」
キラはPCXに確かめた。
「ここまでキラ様を巻き込んでしまったのは私です。決着は私がつけます。」
PCXはそう言うと、球形から、長い槍状に変形した。
「アルコーンの中心部、あの黒い部分を狙ってください。」
アルコーンは、真下に潜り込んだ二人を捕らえようと、細かく動き回った。キラは槍状に変形したPCXを肩に担いで、アルコーンの真下で同じように動き回った。
部屋の隅に隠れるようにして、二コラやハンク、フローラが固唾を飲んで見守る。
『諦めよ!しょせん、敵うわけはない。』
アルコーンから声が響く。
「よし、今だ!」
キラは、全ての力を右肩に集めて、力強く、PCXを投げた。
「突き刺され!」
皆の視線は一点に集まっている。音もなく、槍状のPCXは飛ぶ。
真っすぐに、アルコーンの急所目掛けて飛んだ。

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