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3‐44 最後の抵抗 [AC30 第3部オーシャンフロント]

確かに、PCXは、アルコーンの黒い部分に突き刺さった。僅かな静寂があった。全ての時が停まったようだった。
『これで私を破壊したつもりか?』
再び、アルコーンから声が響く。
すると、突き刺さっていたPCXが次第に黒く変色し始めていく。
PCXの表面を覆っているライブファイバーがぼろぼろと落ちてくる。そして最後に、PCXの本体らしき黒い小さな箱が、キラの足元に転がった。そして、目の前で、パチンと小さな音を立て割れてしまった。
『主に傷をつけようなどとは、恐れを知らぬ者だ。』
最後の抵抗であった。もはやなす術はない。
『キラよ。これ以上、抵抗する事は諦めよ。お前が私とともに永遠の命を生きると誓えば、そこにいる者たちには危害は加えまい。いや、この先、開放する事も約束しよう。ともに、この地で生きる道があるのだ。』
アルコーンは既に勝者として、憎らしいほどの余裕を持ってこう言った。
キラは、アルコーンを見上げたままだった。
『キラ、返答せよ!』
それでもキラは、じっとアルコーンを睨み付けたまま、動こうとしない。ニコラたちもじっとキラを見ている。
よく見ると、キラは何か呟いているようだった。
「・・・8・・・7・・・・6・・・・。」
カウントダウンをしていた。
「5・・・4・・・3・・」
『何をぶつぶつ言っている?』
「2・・・1・・・・0。・・・アルコーン、終わりだ!」
キラが叫ぶ。同時に、アルコーンが急に点滅を始めた。不規則な光を発し、上下左右、浮遊している場所が定まらない。そのうち、壁にドーンとぶつかり始める。広い空間の中で、猛烈なスピードで壁に突き当たり、タワー全体にヒビ割れが走る。壁の一部がバラバラと降ってくる。
キラは、急いで、みんなが潜んでいる場所へ走り込んだ。
「いったい、何が起きたんだ?」
ニコラが訊く。
「フォルティアがやってくれたんですよ。」
「だが・・突き刺さっただけで・・・」
「いえ、突き刺さった時、フォルティアは、アルコーンの中に、自分の意識を送り込んだのです。30秒ほどでアルコーンの中に広がっていくのだと言っていました。いや、フォルティア自身が、アルコーンの中でカルディアの意識と闘っているんです。」
キラの説明を聞き、改めて、アルコーンを見る。確かに、アルコーンが苦しんでいるように見える。そして、壁にぶつかるのは、内部で戦う意識が反射的に動くためのように見えた。
「タワーが・・壊れるわ。急いで、外へ!」
上の方を見ていた、エルピスが叫ぶ。
一目散に、皆、小さな穴を伝って、外に出た。
見上げると、高いタワーが左右に揺れている。
カルディアのクローンの女性たちが、次々に飛び出してくる。
ドーンと大きな地響きがした。
そして、タワーの真ん中を火柱が上がる。ズ、ズズ・・と鈍い音がしてタワーの下部が潰れ始めた。
中空部分に向かってタワーが沈んでいく。ギイーという断末魔のような音が辺りに響く。
ダモスも、ドロスも、逃げ出してきた女たちも、ただ、その様子をぼんやりと見ていた。
「これで・・終わったのね・・・・。」
フローラは涙を流しながら呟いた。


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