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3‐45 救世主 [AC30 第3部オーシャンフロント]

『カルディア』は、終に倒れた。
オーシャンフロントは、ニコラたちダモスや、ドロス、そしてタワーの中で生きてきた女性たち自身が、新しい世界へと作り直せる時が来たのだ。
「この先、どうなるか、今は判らないが、ここは生きるには困らない場所だ。助け合えば、きっと未来は開ける。ここで、我々とともに生きよう。新しいオーシャンフロントを作ろう。」
ニコラが、誇らしげな顔でキラたちに言った。
ジオフロントの皆も、青空が見え、爽やかな風が流れ、豊かな実りがある、この場所が、如何に素晴らしい場所かは、よく判っている。ここに留まれば、この先、きっと幸せで豊かな暮らしが待っているに違いないだろう。
ジオフロントに戻れば、極寒の冬や酷暑の夏には、じっと息を潜めて暮らさなけらばならない。気候の良い春や秋であっても、命を奪う巨大な虫たちに怯える日々が待っているに違いない。
それでも、皆、すんなりとここでの暮らしを受け入れることができず、一様に戸惑いの表情を浮かべていた。
「キラ・・・。」
ハンクがキラに何か求めるように呟いた。
キラは振り返り、集まっているジオフロントの皆の顔を見た。皆、何かを待っているようだった。そして、それをキラは小さく頷いて受け止める。それから、ゆっくりと振り返り、ニコラを見た。
「いえ、ジオフロントへ戻ります。どんなに辛い暮らしだろうと、僕たちの居場所はあそこなのです。」
ジオフロントの皆もキラの言葉に頷いた。
それを見て、ニコラも皆の思いを受け取ったように、何度か頷き、笑顔を見せた。
「そうか・・・まあ、そうだろうな。・・」
ハンクがふと呟いた。
「だけど・・どうやって戻るんだ?PCXはもう居ないし・・ジオフロントがどれくらいのところにあるかもわからないんじゃないか?」
「そうだな。おそらく、ジオフロントの場所は調べればわかるが・・ここから皆を送り届ける方法がない。船の類はないし・・外洋に出られたとして、どんな生き物が待ち構えているかもわからない。無事にたどり着けるかどうか・・・これは難題だ。」
ニコラは腕組みをして考える。ジオフロントの皆も腕組みして考える。

「ねえ・・あれ・・あれは何?」
空を見上げていたサラとユウリが指差した。
はるか上空に、何か丸い物体が浮いている。そして、それは徐々に近づいてくる。
その物体は、皆の予想を超えるほどの大きさで、形は、空中を飛び回ることができるアラミーラを大きくしたような平たい円盤状のものだった。
その物体は何度か、オーシャンフロントの上空を周回して、タワーが立っていた場所の前に広がる広場の上空で静止すると、長い脚を伸ばして静かに着陸した。
ニコラやキラたちは、広場の周囲に生える樹木の陰に隠れて、じっと様子を伺っている。

「キラ!キラ!」
円盤状のものから声が響いた。聞き覚えのある声だった。
「ガウラ?ガウラかい?」
キラが樹の陰から飛び出して叫んだ。
すると、円盤状の底が、静かに開いて、長い階段が伸びてきた。そして、上からゆっくりとガウラが姿を見せた。
「キラ・・無事だったのね!」
ガウラが階段を駆け下りて、キラを抱きしめる。
その様子を見て、ハンクやサラたちも飛び出してきた。
「ハンク!・・サラ!・・ユウリ!・・無事だったのね・・良かった・・・」
再会を喜び、抱き合い、歓喜に沸いていた。
その様子を、フローラは、暫く静かに見つめていた。
「フローラ!」
ガウラがようやく気付いて声を出した。

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