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3‐47 新たな未来へ [AC30 第3部オーシャンフロント]

キラたちが、ジオフロントに戻ってから、5年が過ぎた。
皆それぞれに、ジオフロントの様々なブロックを受け持って、熱心に仕事をしていた。
キラは、アエロプリオを使って、外界へ出て食料の調達や資源の開発を受け持っていた。
また、2か月に一度は、オーシャンフロントと行き来し、交流を続けていた。おかげで、ジオフロントとオーシャンフロントとは、結びつきを強め、人の交流も深まって、今では、双方の住人も随分と増えていた。

「エヴァ、見えてきたよ。」
操縦席で、キラが言う。
「・・ほんと?・・どこ?」
幼い女の子が副操縦席で、少し不満そうな声で答えた。

昔、ニコラが心配していた通り、フローラは、やはり短命だった。
オーシャンフロントからジオフロントに戻ってからしばらくは元気であったが、キラの子どもを妊娠して、すぐに体調を崩し、エヴァを出産すると同時に他界したのだった。
ガウラは、先人類の医学知識を総動員し、ジオフロントの医療器具全てを使って、フローラを治療したが叶わなかった。

エヴァは、ジオフロントとオーシャンフロント両方の希望の象徴になっていた。
「やあ。よく来たね。・・おや、また少し背が伸びたみたいだね。」
「こんにちは・・ニコラさん。」
エヴァはちょこんと頭を下げる。
「今日は、君に、新しい友達を紹介しよう。」
ニコラは、そう言うと、手で自分の顔を隠した。そして、パッと手を開くと、ニコラの顔は、キラに変わっている。
「えっ?!」
エヴァが驚いて尻もちをつきそうになった。
「まさか・・」
少し離れて様子を見ていたキラが驚いて近寄った。
「まさか・・お前・・P・・PCXか?」
すると、目の前のキラの顔をしたニコラが、急に膨らんだかと思うと、真ん丸の小さなボール形状に変化した。
「はい、キラ様。お久しぶりです。」
「どうして・・・?」
驚いた表情のキラを見て、隠れていたニコラが姿を見せた。
「少し時間が掛かったんだが・・・あのタワーの残骸を片付けて居た時に、PCXを発見したんだ。随分破損していたんだが、何とか修理した。幸い、中枢部分は破壊されていなかったようで、無事、御帰還ということさ。」
『カルディア』との闘いで、PCXは自らの「意識」を『カルディア』へ送り込み、意識の中で闘い、ついに「カルディア」を崩壊させた。同時に、PCX自身も崩壊したと考えられていた。
「カルディアの意識が崩壊していく寸前に、自分のメモリー回路に意識を飛ばすことができたのです。いえ、自分の意思ではなく、キラ様に呼び戻されたようでした。おかげで、無事に戻る事が出来ました。」
「良かった・・また、会えるとは・・・」
キラは涙を流し、PCXとの再会を喜んだ。
「これからは、エヴァ様の御守役をさせていただきます。」
PCXはそう言うと、「さあ、エヴァ様、農場へ行きましょう。美味しいトマトが出来ているはずです。」と声を掛けた。
「トマト?・・エヴァ、トマト、大好き!」
エヴァは、そういうと、オーシャンフロントの農場に向かって走り出した。
「エヴァ様、お待ちください。転びますよ。」
PCXが後を追う。

頭の上には、高く高く青空が広がっていた。(完)

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