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file4-9 指紋 [同調(シンクロ)]

署に着くと、鑑識課の川越という担当が一樹を待っていた。
「矢澤さん、お帰りなさい。早速、お知らせしたい事があるんです。もう課長には報告したんですが・・」
玄関前で声を掛けられた。
「資料室で聞くよ。」
そういうと一樹を先頭に4人は資料室に入った。
レイをソファに座らせて、亜美が飲み物を持ってくるといって部屋を出て行った。ソフィアがレイに寄り添うように座った。
「あの・・報告なんですが・・」
川越はそういうとソファの二人を見た。部外者がいる事を気にしたのだった。
「ああ、彼女たちは・・事件の関係者だ。協力してもらっている、大丈夫だ。」
「・・まだ、結果は確定ではないんですが、部屋から採取した指紋を前歴者と照会をかけたんですが、該当者はありませんでした。」
「そうか・・まあ、そんなに簡単に容疑者がわかるはずもないが・・」
「ただ、ちょっと僕が気になって・・他の事件の指紋と照合したんです。そしたら・・あの葉山さんの怪我をした事件、あの容疑者と一致したんです。」
「何だって!・それは、間違いないんだな。あの男、まだこのあたりにいたのか!」
一樹は川越の報告を聞いて悔しがった。
「あ、それと・・現場に毛髪が落ちていまして、おそらく今回の被害者とは別の毛髪なんですが・・」
「それがどうした?」
「ええ、指紋は葉山さんの時の容疑者だと思うんですが、髪の毛はどうやら違うんじゃないかと・・」
「どういうことなんだ?」
「ええ、髪の毛は、今の分析技術で、性別がわかるんです。それによるとどうやら女性らしいんです。」
「じゃあ、もう一人女性の容疑者がいるって事か?」
「いえ、そうじゃなくて・・・つまり、葉山さんの事件では、矢澤さんの目撃情報から男性と決め付けていたんですが、指紋が一致しているので・・・つまり・・」
そこまでの話を、飲み物をとりに言っていた亜美も聞いていた。そして、一樹の後ろから、
「じゃあ、大柄な女性。それも男性に見えるようなカモフラージュをしているって事?」
「ええ、どうもそうらしいんです。・・女性なのに男装というか男性になっているという・・」
「確かなのか?」
「すいません。鑑識課でもまだ意見は分かれているんです。部屋から採取した指紋全てを照合していくにはもう少し時間が必要なんですが・・・僕はそう思うんです。課長もその線でもう一度検証しろと・・」
「ありがとう。もう少し確実になったらまた教えてくれ!」
一通り話を聞いたあと、川越は部屋から出て行った。

一樹は、椅子にどっかりと座って考え込んでしまった。これまで探してきた容疑者と今回の拉致事件、どこで繋がっているのか、それとも、全く見当違いなのか・・・じっと考え込んでいた。

「ねえ!レイさん!レイさん!」
レイに寄り添うように座っていたソフィアが、突然、声を上げた。
レイが突然苦しみ始めたのだ。顔を高潮させ、息も上がっている・・いや息苦しそうにしている。

「ううっ・・ううっ・・やめて!」
何度かそう言うと、気絶してしまった。今度は、顔色がみるみる真っ白になっていく。
ソフィアがレイの体を揺すってみたが反応がない。亜美も駆け寄り、呼び掛けた。レイはどんどん弱っていくようだった。唇が紫色になってきて、ほとんど呼吸もしていないようだった。
「亜美!救急車だ!」
橋川署の隣には、消防本部があり、亜美はすぐに救急要請をした。ほんの1分ほどで、ストレッチャーと酸素ボンベを携えた救急隊員がやってきた。
一樹はレイを抱き上げ、玄関先まで出ていた。

「神林病院に搬送してくれ!・・亜美、一緒に付き添って・・病院には俺から連絡しておくから。早く!」
亜美とレイを乗せた救急車はけたたましいサイレンを響かせて国道を走っていった。

その様子の一部始終を、林が玄関脇から見ていた。
「なんだい。今度は急病か?神林病院って言ったな。やっぱり何かありそうだな。」
そう呟いた時、すぐ脇に、佐伯がいた。
「おやおや、これは矢澤の友人、林君じゃないか。今度はどんなゴシップを探してるんだい?」
「・・・また、何かネタくれるのか?」
佐伯はにやりと笑って、手のひらを突き出した。金を要求しているのだった。
「勘弁してよ。前のネタ、ちっとも金にならなかったんだぜ。もっとましなネタくれるんなら・・」
「そうだなあ・・誘拐事件に強盗事件、今度は拉致事件・・最近、うちは賑やかだからなあ。」
「その辺のネタなら間に合ってるよ。・・だいたい、お前さんのネタ、古いんだよ。・・なあ、あの、さっき救急車で運ばれていった娘の情報はもってないかい?」
「はあ?娘・・ああ、時々顔を見かけるが・・知らねえな・・矢澤とは時々会ってるみたいだな。」
「なんだい!それなら俺のほうが詳しいな・・・さっきも、拉致現場に一緒に行ってたしな。・・なんだか、娘から話を聞きだそうとしてたみたいだからな。・・何かありそうなんだが・・」
佐伯は、林の話を聞き、
「ふーん。・・ちょっと調べてみるか。」
そう言って、署の中へ入っていった。

タグ:指紋
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