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1-20 再び思念波 [同調(シンクロ)Ⅱ-恨みの色-]

「まったく同じ文章なんて・・ありえないわ・・やはり、これは連続殺人ですね・・。」
そう言ったのは藤原女史だった。
そしてさらに続けた。
「紀藤さんに頼まれていた、佐原氏と上村氏に関係の深い人間をもう一度洗いだしてみたんですが、やはり、下川医師以外にこれといった人物は浮かんできませんでした。」
「やはり、下川医師がキーマンという事か・・・。」
鳥山課長が呟いた。
「昼に、ヴェルデに行ったんですが、2か月ほど前、佐原氏と上村氏、それともう一人、この男は・・誰かは判らないんですが、男3人で夜10時ごろに来店したようなのです。店主が証言しました。何か秘密めいた話をしていたらしいというんですが・・詳細までは判りませんでした。」
一樹が報告する。
「きっと、もう一人は下川医師ですよ。」
亜美が続ける。
「いや・・そう決めつけちゃだめだ。もちろん、下川医師の可能性は高いだろうが、仮に他の人物なら、今回の真犯人という事になる。店主には、下川医師の顔写真は見せたのか?」
鳥山が一樹に訊く。
「いえ・・義彦・・いや店主は、その男の顔をあまり覚えていないようでした。」
「そうか・・もう一度確認してくれ。それと、下川医師はどこにいる?」
「今日は午後から東京で学会があったようです。戻るのは三日後と伝言を受けました。」
一樹が答える。
「上村氏が自殺をした時間は、新幹線の中ということか?帰るのは三日後か・・・。」
鳥山が残念そうに言った。
「下川医師を任意で取り調べしましょう。絶対、二人の死に関係しているんですから」
亜美が言った。
「それは無理だ・・。」
一樹が言う。
「まだ、これは殺人事件と決まったわけじゃないんだ。単なる自殺なら、取り調べはやりすぎだ。戻るのを待つしかない。その間に、もう少し、三人の関係を調べておこう。」
鳥山が言った。
すると、松山が続けた。
「佐原氏を札幌まで訪ねて行った男が誰なのかも気になります。もし、上村氏か下川氏であれば、何か、その頃に重大な罪を犯したんじゃないか。その秘密を暴露されることを恐れて自殺したという筋もできます。」
「ああ・・そうだな・・・済まんが、松山と森田はもう一度札幌に飛んでくれ。随分前の事だから、それほど簡単ではないだろうが、何とか、札幌で何があったのかを調べてくれ。・・矢沢と紀藤は、下川医師だ。不在の間に、彼の周辺や経歴・・何でもいい。札幌との関係はなかったか、調べるんだ。」
「じゃあ、私たちは、佐原氏、上村氏、下川氏の3人と関係の深い人物はなかったか、もう一度チェックしてみます。葉山さん、良いですね?」
そう言ったのは藤原女史だった。

大筋話が纏まったところに、紀藤署長が入ってきた。

「みんな、いるな?・・・先ほど、新道ルイさんから電話があった。夕方、病院内で、強い思念波を感じたそうだ。佐原氏が自殺した時と同様、恨みの色のような思念波だったらしい。まだまだ、恨みを晴らしていない、そういう思いを持った人物が病院内に居るのは間違いなさそうだ。」
紀藤署長の話を聞いて、一樹が頭をかしげた。
「変ですね。・・・佐原氏の自殺の時の思念波と同じなのかな?・・佐原氏と上村氏が同じ人物に殺されたのなら、思念波はもっと早い時間に・・いや・・病院ではなく、豊城公園でないと矛盾する。仮に、下川医師が佐原氏や上村氏を自殺に追いやった人物とすると、やはり、病院ではないはず。・・別の誰かがいるという事でしょうか?」
「そこまでは・・ただ、恨みの思念波を感じたという事は、まだ、復讐は終わっていないという事になる。まだ、犠牲者が出るという事だ。何としても食い止めなければならん。」と紀藤署長が言う。
「しかし、誰が狙われているのか、誰が恨みを抱いているのか、全くわかっていないのよ。これじゃあ、手も足も出ないわ。もう少し、手掛かりはないのかしら・・・ルイさんはもっと具体的なものは判らないの?」
亜美が少しヒステリックに言った。
「おい、亜美。それは俺たちの仕事だろ?・・病院内に、強い恨みを持った人物がいるという事は確かだ。それが誰か、徹底的に聞き込みをして絞り込むんだ。下川医師が戻るまでの間、俺たちにできる事だろ。」

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