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2-13 ドライブレコーダー [アストラルコントロール]

五十嵐と零士は、預かったSDカードの中身を確認するため、零士のアパートへ行くことにした。
署に戻って確認してもよいのだが、万が一、2課に何か勘繰られるのも困る。そこで、零士のアパートになった。はじめは、五十嵐のマンションでも良いといったが、昨夜のこともあり、零士のアパートにした。
五十嵐が部屋に来るのは久しぶりだった。
「相変わらず小ぎれいにしてるのね。」
部屋に入るなり、五十嵐が言った。
「君の部屋ほどじゃないけどね。」
「あれは、使っていないからきれいに見えるだけよ。・・さあ、見ましょう。」
五十嵐は、狭いリビングの真ん中に座った。パソコンを開いてSDカードを差し込む。必然的に、二人は身を寄せるような格好になった。
「ちょっと進めるよ。」
零士が、マウスを使おうと手を伸ばした時、五十嵐の体に触れてしまった。もっと正確に言うと、五十嵐の豊満なバストに腕が当たったのだ。
「いやっ」と小さく五十嵐が反応する。
前と一緒だった。こういう時に発する声が、普段の五十嵐とは違って、妙に色っぽい声を発する。
零士は、何事もなかったかのように無反応を装ってマウスを操作する。
「ここだ。」
画面を再生する。
タクシーのドライブレコーダーの画面は、遠くにコンビニの明かりが映っている。徐々に近づくと、バイト店員が教えてくれた、ごみ集積場の壁側が映っていた。
「これだ!」
二人が同時に口にした。
画面の端に、確かに赤い髪の女性が映っていた。何をしているわけでもなさそうだった。静止して画面を拡大する。画質が荒く、拡大すればするほど、ぼんやりとしか見えない。
「顔まではわからないわね。」
画面にはバイト店員がごみ袋を抱えて出てきたところも映っていたが、そのあと、赤い髪の女性は映っていなかった。
「確かにあの時間、あの場所に赤い髪の女性はいた。店員の話通り、すぐにその場を離れ住宅街に向かったとすると、タクシーを降りた桧山氏と出くわしたはずよね。」
五十嵐が推理した。
「続きを見よう。確か、工藤さんの話ではそこでUターンしたと言ったから、コンビニの向こうから走り出てくるところが映っているかもしれない。」
画面を動かす。
零士が言った通り、桧山氏を下ろした後、ハイヤーはUターンした。画面の右端に小さく赤い髪の女性が向かってくるところが映っていた。ハイヤーはそのまま走り出して、画面から赤い髪の女性は居なくなった。
「このあと、赤い髪の女性と出くわした桧山氏は、その女性を連れて自宅へ戻ったということになる。知り合いという可能性が高いな。桧山氏には娘は居なかったよな。」
零士が訊くと五十嵐が、
「ええ、赤い髪の女性の年齢はわからないけど、その類の女性の縁者はどうかしら?姪とか親戚の娘とかかしら。」
「いや、そういう女性なら、誰にも目撃されないような怪しい行動を取ることはないだろうな。」
「そうね。じゃあ、だれなのかしら。」
目撃者や映像で、赤い髪の女性の存在は確実だった。
そして、それは桧山氏がよく知る人物でもあることまではわかったが、その先が一向に見えない。
「進んでいるような・・振出しに戻ったような・・変な感じね。」
「ああ・・。」
次の一手が見つからない。
「お腹空かない?」と五十嵐が零士に訊いた。
昼間、あちこち回っているうちに、昼食を食べ損ねたまま、夕方になっていた。
「ああ、どこか、飯を食いに行くか。」

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