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1.旅立ちの日 [AC30第2部カルディアストーン]

いよいよ旅立ちの日を迎えた。
ライフエリアのほとんどの人がコムブロックに集まっていて、ビジョンにはクライブント導師も現れている。
キラとアランは、背中に大きめのリュックを背負っている。中には、武器や食料が入っている。手には、アラミーラとグラディウスを持っていた。PCXはボール状のままで、宙に浮いていた。
「まずは、北へ向かいます。灼熱の季節が終わるころには、戻ってきます。」
キラが集まった人々に力強く言った。
「キラ、気を付けてね。」
あの日からキラの母ネキは、余りの出来事に心を痛め、寝込んでしまっていたのだが、旅立ちの日には、サラの力を借りてコムブロックに顔を見せていた。随分窶れている。
アランは父も母も早くに亡くしていて、妹のユウリが見送った。
「大丈夫さ、ちゃんとカルディアストーンを持ち帰ってくるから。」
不安げなユウリを前に、アランが笑顔で答え、頭を撫でた。
『勇者たちよ。幸運を祈る。』
クライブント導師の太い声がライフエリアに響いた。キラとアランは、アラミーラに乗り、すーっと浮き上がると一気に地表への階段へ向かった。PCXは二人の後を追うように飛んで行った。
ホスピタルブロックの前で、フローラとガウラが見送る。
「ちゃんと戻って来いよ!待ってるぞ!」
すごいスピードで遠ざかる二人に、ハンクとプリムが叫ぶ。

アラミーラは二人が当初考えていたよりもずっと早い速度で進む。いつもなら1時間近く掛かって登る階段も、あっという間に飛び越えて、出口につながるチャンバーに着いた。
「これなら、すぐにジオフロントを見つけることができるさ。」
アランは上機嫌だった。
最後のチャンバーのドアを開く。地表はようやく雪解けが始まったころで、早朝の外気温は0℃程だった。
まだ、虫たちは土の中にもぐったままだった。
「さあ、どうする?」
上機嫌のアランは、軽くキラの肩を叩いて言った。
「一旦、南へ向かおう。まだ雪解けが始まったばかりだ。暑くなるまでは大丈夫だろう。それから徐々に北へ行けばいいだろう?」
「それは良いが・・・ジオフロントをどうやって探す?ここだって、入口は草むらの中で、虫たちに見つからないように隠されてるんだ。他も同じようなもんだろう?」
確かに、目視で発見できるとは限らなかった。
「海はどうかな?食料の調達には便利だから、もしも人が生きてるなら、何か痕跡があるだろう?」とキラが言った。
「まあ、何にしても決め手はないんだ。とにかく、海岸に沿って南へ下ってみるか?」
アランはそう言うと、アラミーラに乗り一気に上昇していった。
「PCX、ついて来れるか?」
キラが言う前に、PCXはアランと同じほどのスピードで上昇していった。キラも慌ててアラミーラに乗り高く飛び上がった。
遥か眼下に、太陽の光を反射して輝く海原が見えた。風は冷たいが、ライブスーツが身を守ってくれている。勇者たちは、海岸へまっすぐに向って行く。
「PCX、俺たちのジオフロントの場所はすぐに判るんだよな?」
風を切りながらアランが問う。
「ええ・・フローラ様の位置はどれほど離れても必ず判ります。フローラ様がジオフロントにいらっしゃる限り、私は戻ることができます。」
PCXは、アラミーラの様な、細い楕円の円盤状に変形していた。
「このあたりで、ライブカプセルに入ったフローラを見つけたんだったな。」
海岸を見ながらアランが言う。少し風が強いのか、岩礁には高い波が寄せていた。

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