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2.地表の世界 [AC30第2部カルディアストーン]

ジオフロントを飛び立ってから、しばらくすると二人とも、言葉を交わすことなく、周囲の様子を探りながら無心に飛び続けた。
「そろそろ休憩しましょう。もう4時間近く飛び続けています。」
PCXが、二人を気遣うように言った。
「そうか・・・そうしよう。」
キラはそう答えると周囲を見回し、安全そうな場所を探した。
「前方の高台が良いでしょう。レーダー探索では・・虫たちは居ないようです。」
PCXは、レーダーシステムで周囲の生命体反応を見てから、二人に言った。
ゆっくりと高台に降り立った。周囲はうっそうとシダ類が茂っている、半湿地帯のようだった。降り立った高台は、大きな岩石のようだった。
「ああ・・さすがに・・疲れたな・・・」
アランは地面に降り立つと同時そう言って、ごろりと横になった。キラもさすがに疲れて座り込んだ。PCXはゆっくりと降りてきて、二人を包むように幕の形に変形し、周囲の植物に似せた濃い緑色に変色した。風を遮り、周囲からも気づかれることはない。
「ジオフロントからどれくらいの距離なんだろうな?」
仰向けになって空を見ているアランが呟いた。すぐにPCXが答える。
「300kmほど南東の位置に居ます。・・現在、周囲50kmの範囲では、人間の生命反応はありません。」
「まあ・・そんなもんかね・・・PCXが居れば、すぐにジオフロントは見つかりそうだな。」
アランはそう言うと大あくびをした。その様子を見て、キラが言った。
「PCX、少し休ませてもらうよ。」
二人はPCXに守られるようにして、しばらく眠った。
「起きてください。・・巨大な虫が近づいています。・・」
静寂を破って、突然PCXが二人を起こした。
二人はハッと飛び起きて、すぐにグラディウスを構えた。
「どこだ?」
キラが訊くと、
「1kmほど東から、こちらに近づいてきます。」
「1km?・・おい、PCX、いい加減にしろよ。そんなの近づいているって言わないだろ?」
「いえ、恐ろしく大きくて、ものすごいスピードです。ここに到達するまで1分以内です。」
そう言っているうちに、二人にも、空を飛んでくる巨大な虫の姿が見えた。
ジオフロント周辺では見たこともない姿だった。細長い胴体に薄い羽根を4枚、ピンと広げている。巨大な目と、大きな牙をもった顎が特徴的だった。
「あれは昔、トンボと呼ばれた虫でしょう。異常な進化をしています。危険です。」
PCXはそう言うと、幕の形から二人を覆うシェルターの形に変形した。その虫は、シェルターを掠めるように飛んだ。明らかに獲物と認識して、狙っているようだった。
「戻って来ます。伏せてください。」
PCXはさらに低く小さく縮み、二人の体を地面に抑え込むようにした。再び、その虫はすぐ上を掠めて飛んだ。
「このままじゃ、ダメだ!・・何か武器を・・・リュックサックの中に・・・確か・・・。」
うつ伏せのまま、アランがもぞもぞの何かを取り出そうとしている。
「アラン様、カニオンで撃ち落としましょう。さあ、カニオンの発射口を真上に立ててください。上空を掠めると同時に、そこを開きます。タイミングを合わせて撃ち落としてください。」
PCXは落ち着いた口調でアランに言った。
「ああ・・・判った・・。」
言われた通りに、アランはカニオンの発射口を真上に向け、合図を待った。虫は、大きく旋回して様子を伺ったあと、再び、恐ろしいスピードで近づいてくる。次は確実に仕留めようという様子だった。
「良いですか・・・3・・2・・1・・発射!」
PCXのカウントに合わせて、アランがボタンを押す。絶妙なタイミングでシェルターの上部が開き、レーザー光線が発射される。真上を掠めた虫は、一瞬でバラバラに吹き飛んでしまった。威力は絶大だった。

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