SSブログ

3.驚くべき虫たち [AC30第2部カルディアストーン]

上空高く吹き飛ばされた虫の死骸は、二人の上にばらばらと落ちてきた。PCXがシェルターとなって防いでくれる。
目玉の部分だけでも1m程度あり、ドスンと鈍い音を立てて地面に落下してきた。胴体は細長く、軽いようだった。一番最後に、透明の薄い羽根がひらひらと落ちてきた。
シェルターが開き、落ちている虫の死骸を見て、二人は改めて驚きと恐怖を感じていた。もしも、アラミーラで空を飛んでいる時だったら、ひとたまりもなかっただろう。暫く二人は茫然としていた。
「日暮れまであと2時間です。今日はもうここで休みましょう。しばらくは、虫たちも寄っては来ないようですから。」
二人の様子を察知して、PCXが提案する。
「ああ・・そうだな・・その方が良さそうだ。」
キラが答えると、アランが言った。
「じゃあ、食糧を探して来よう。何か、樹の実でもあればいいんだが・・・。」
「それなら、僕は、休めるような場所を作っておこう。PCX、君はアランと一緒に行ってくれ。」
キラが言う。アランは、グラディウスを持って、PCXとともに、高台から下の湿地帯へ降りて行った。
キラは、地面を掘り、二人が横になれる場所を作った。出来上がる頃に、アランとPCXが戻ってきた。
「小さいが、旨そうな樹の実がたくさんあった。今日はこれで良いだろう?」
アランは袋一杯に、赤い実を持って帰ってきた。
「毒性はありませんでした。栄養価はそれほどありませんが、空腹は満たせるでしょう。」
PCXはすでに実の成分を分析していた。二人は満腹になるまで樹の実を食べたあと、キラの掘った穴に身を横たえた。その上をPCXが蓋をするように覆いとなり、冷気を防いだ。二人とも昼間、長時間飛行したためか、すぐに眠りに落ちた。アンドロイドのPCXには眠りは必要ない。夜中じゅう、周囲の様子を監視し、二人を守った。

翌朝、二人が目覚めると、昨日放置していた虫の死骸が無くなっているのに気付いた。
「体長20cmほどの虫が多数やってきて、夜のうちに、死骸をどこかに運んでいきました。ホルミカの一種でしょう。特に、危害を加える様子はなかったので、そのままにしておきました。」
PCXが話した。
昨日の樹の実の残りを朝食に摂り、すぐに出発の準備をした。虫に襲われる事を想定して、アランは小型のカニオンを肩に装着した。キラはスクロペラムを腰につけた。
「大丈夫です。現在、5km周囲に虫は居ません。行きましょう。」
昨日と同様にキラとアランはPCXとともにアラミーラで空を飛んだ。
「キラ、海岸沿いに行こう。」
アランが先導した。
海と陸地の境界線は、ずっと南東方向へ伸びている。前方には、積乱雲が大きく空高く成長している。
徐々に気温が上昇してきた。
砂浜や岩礁が互い違いに続く海岸、そこから2kmほど陸地側には豊かな森が続いている。その先には高い火山が連なっていて、山頂付近には白い雪さえも見える。
「生命体の反応はありますが・・虫の類のようです。」
PCXは5kmほど進むたびに、同じように報告を続けた。
その日から、しばらくは、海岸沿いを飛んで南東方向を目指した。
夜は海岸の砂地や高台で同じように穴を掘り休む。外気温はすでに日中は40℃を超えるほどになった。
幾度か、虫の襲来があった。
先日の巨大なトンボだけでなかった。カブトムシのような甲虫たちもいる。どれも巨大化し、肉食種に変わっている。
だが、その度に、アランが肩に装着したカニオンを器用に使って撃ち落とした。カニオンの威力は絶大だった。
アランはカニオンを完全にマスターし、躊躇なくトリガーを引き虫たちを撃ち落す。そのうちに、アランは、PCXが報告するのを待つ間もなく、虫を発見すると狙うようになった。
そのために、食糧も、ほとんど困る事もなく調達できた。
キラは、そんなアランを見ていて、不安を覚えるようになっていた。防御の為ではなく、自らの満足のために、虫たちを殺しているように感じられたからだった。

nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0