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4.アントリアン [AC30第2部カルディアストーン]

すでに、1ヶ月が過ぎ。五千キロほど移動していた。しかし、肝心の「ジオフロント」を見つけることはできなかった。
いつものように、日暮れ近くになり休む場所を探した。
そのころには、海岸沿いの風景も随分と変わってしまっていた。知らぬ間に、植物は少なくなり、背の低い草がところどころ片間って生えているような荒涼とした地帯になっていた。
「じゃあ、食糧を調達に行ってくる。」
アランは、PCXとともに出かけた。
砂地が随分内陸にまで広がっている。アランは地面すれすれの高さでアラミーラを飛ばし、食糧になりそうなものを探した。最初のころは、植物の実が多かったが、近ごろには虫を中心に獲るようになっていた。
「こんな時に、ドラコでも現れれば、都合が良いんだがな・・・」
アランはすっかり虫たちを攻撃することに慣れていた。時折、目の前で木端微塵に砕け散る虫を見て、快感すら感じるほどになっていた。
アランは、周囲の様子を注意深く観察しながら、ゆっくりと飛んでいる。どこにも隠れるような場所がない低地、虫の姿はなかった。
「獲物は居そうにないか!」
そう呟いた時だった。
いきなり、地面から、黒く鋭い角のようなものが何かが飛び出してきた。
アランは足元を掬われた格好になり、アラミーラが外れ、吹き飛ばされてしまった。何度か地面に叩きつけられ、停まったところに、再び、地面から同じように黒い鋭利な塊が突き出してくる。
アランは必死に身をかわす。4度ほど、攻撃されたが何とか凌いだ。
近くを飛んでいたはずのPCXの姿はなかった。
「なんだ、一体!・・土の中に何かいる・・何だ?・・ブクラか?」
アランは低い姿勢でゆっくりと周囲を探る。ブクラならば、振動に反応するはずだった。
アランは、そっと近くに落ちていた石を拾い上げる。そして、カニオンの照準を確かめてから、そっと石を投げた。
「コツン」と石が地面に落ちた。
「さあ、出て来い!」
アランは待ち構えた。だが、何の反応もなかった。
「アラン様!後ろ!」
どこからかPCXの声が響いた。
振り返ると、2本の大きな牙状のものが、アランに狙いを定めている。はるか頭上高くに牙が持ち上がる。次の瞬間、アランを突き刺そうと凄まじいスピードで迫ってくる。
狙いを定めている時間などない、闇雲にカニオンのトリガーを引く。2発は外れた。1発は鋭い牙に命中したが、少し傷をつける程度だった。4発目は地面辺りに当った。すると鋭い牙はアランの横に轟音と共に崩れ落ち、静かになった。
PCXがようやくアランの傍にやってきていった。
「こいつは、きっとアントリアンという虫です。地面に潜っていて、近くに餌が寄ってくると飛び出して捕えるのです。」
「アントリアン?」
「アリジゴクの事です。」
「こんなのが地面の中にいるのか・・・。」
アランは周囲を見回した。
「ここは、アントリアンの巣でしょう。・・先ほど気づいたのですが、辺りに見える草むらは、カモフラージュです。アントリアンの胴体の一部のようです。・・早く、引き上げた方が良いでしょう。」
PCXはそう言うと、飛ばされたはずのアラミーラをアランの前に差し出した。
アランはすぐに装着すると、一度高く飛び上がった。
鋭い牙をもったアントリアンの死骸を見下ろすと、その周囲の草むらが動き始めるのが見えた。そして、横たわる死骸に、同じような牙がいくつも突出し、食べ始めた。共食いだった。
「これじゃ、食糧調達どころじゃないな・・。」
アランはがっかりした表情で見下ろしている。
「キラ様が心配です。すぐに戻りましょう。」

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