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3‐1海上の道程 [AC30 第3部オーシャンフロント]

地表はすでに50℃近くの熱波に覆われ始めていた。最後のチェンバーまで、ガウラは見送りに来ていた。
「では、行ってきます。母たちをお願いします。」
「ええ、大丈夫。エリックもいるし、ジオフロントも回復しつつあるから。気を付けてね。」
ガウラは、キラの手を握りしめた。

「さあ、行こう。」
キラがチェンバーの扉を開くと、熱波が入り込んできた。
PCXが先に地表に出る。キラは、PCXが新たに見つけた大型のアラミーラに乗る。ふわりと浮きあがると扉をすうっと通過し、地表に出る。
「ガウラ、すぐに扉を閉めて!」
閉める間、扉の隙間から、ガウラの顔がしばらく見えていた。
「さあ、行きましょう。熱波の勢いに負けないよう、急上昇します。」
PCXはそういうとすさまじいスピードで上昇した。キラも遅れないよう、一気に上昇する。以前に使っていたアラミーラに比べて、安定していて、スピードも出るようだった。何より、大きいことでアラミーラの上に身を横たえることもできる。
一気に1000メートルほど上昇すると、耐えられるほどの暑さになった。
「これ以上上昇すると気流が強くなりますから、しばらくはこの行動を保ちます。オーシャンフロントは北東の方角にあるはずです。」
足元には、青い海が広がっている。陸地のほうにはかなり高いところまで大きな積乱雲がいくつも広がり、熱波の強さを示している。
陸地を離れてすぐは、海上のところどころに小さな島のような黒いものが見えていた。島といっても、植物は生えておらず、岩の塊に過ぎないものだった。
「オーシャンフロントは、熱波を逃れて北へ向かっているはずです。おそらく、北緯60度くらいまでに達しているはずです。そこまでいけば、熱波も届きにくいのです。」

しばらくすると、転々としていた島も見えなくなり、深く青い海が見えるだけとなった。いったい、どれほど進んだのかわからない。PCXが把握する位置情報がすべてだった。
太陽が水平線に沈みはじめた。
「夜に飛ぶのは危険ですから、そろそろ休みましょう。」
「だが、降りれるような陸地はないようだが・・。」
「大丈夫です。」
PCXは、そういうと徐々にスピードを落とし始めた。キラもPCXに合わせてスピードを落とす。
「海面近くまで降りましょう。」
下降するにつれ、気温は上昇する。
穏やかな海だった。
海面が近づくと、PCXが変形をはじめ、大きな半球形になった。
「さあ、私の中へ降りてください。」
キラはアラミーラから、半球形に変形したPCXへ乗り移る。
すると、一気に半球形のPCXは、キラを包みこんで球状になり、波に揺られた。
「日が昇るまで、この状態でいます。お休みください。」
キラは、海岸で白い卵を発見した日のことを思い出していた。
「ライブカプセルか・・・。」
「はい。そうです。これなら、外気がどれほど高温でも大丈夫です。ただ、全く動けませんから、夜の間に海流で流されてしまいます。このあたりの海流は北向きに流れていますから大丈夫でしょう。さあ、体を休めてください。」
キラは、ライブカプセルに身を横たえた。

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