SSブログ

3‐16 二度目の謁見 [AC30 第3部オーシャンフロント]

ステラは、部屋を出るとまっすぐにキラの前を歩く。
しかし、確かにこの光景は見たことがある。そして、あれが、夢だったとしても、もう一度やれば良い事だ。
「さあ、どうぞ。」
そう言って、ステラは、あの黄色い円盤の前に立った。
「それに乗ればいいんですよね。」
キラは、一歩足を踏み出したところで、身を翻して、柵の上に上り、中空部分へダイブした。落下し始めたところで、強い衝撃を感じ、再び、気を失ってしまった。

目覚めると、あの『白い部屋』のソファーにいた。
今度は、体が妙に怠かった。身を起こすのも億劫なほどだった。
「どうなっているんだ・・・。」
「お目覚めですか?少しお疲れになったようですね。主がお待ちです。参りましょう。」
ステラは先程と全く同じ表情で、キラの傍に来て、再びキラを誘導した。
夢ではない。間違いなく、中空部分へダイブした。確かに記憶していた。だが、確実に捕まり、そして何事もなかったように、最初から始まる。繰り返しだった。
ここに居る以上、創造主に逆らえないのだと洗脳する方法なのかもしれない。抗うより、しばらく、掌に乗ってみることに決めた。
ステラに案内されるまま、あの『黄色い円盤』に乗り、創造主のドームへ向かった。

創造主は、前回と同様、半透明の幕の中に居た。
キラが近づくと、幕が開いて、創造主が現れた。
「ここの暮らしはどうだ?欲したものは、全て手に入る。恐れるものなど何もない。これほど快適な暮らしは想像できぬものだったろう。」
前回よりも少し声が強い。
「はい・・確かに、ここには、何不自由のない暮らしがあります。」
キラの答えに、満足そうな表情を浮かべた。
「そうであろう。・・キラよ、このまま、ここで永遠の命を持ち、暮らしていこうではないか。」
思わぬ言葉に、キラは驚いて言った。
「いえ・・・、お断りします。ここは私の居場所ではありません。」
「また、あの薄暗い地下のような場所へ戻ろうというのか?」
「ジオフロントは復活しました。カルディアストーンを手に入れたのです。」
「何を馬鹿なことを。・・・復活するなどありえぬことだ。」
「いえ、ここへ来る前、すでにほとんどの機能が戻っていました。ジオフロントで生きていけるのです。さあ、ここへ連れてきた者たちをお返しください。ともにジオフロントに戻ります。」
「あの者たちは、われに忠誠を誓い、ここで生きる事を選んだ。もうジオフロントに戻ることなどない。」
「そんなはずはない!ハンクたちに、何をした!」
キラは怒りを込めた声で叫ぶ。
しかし、創造主は、落ち着いた声で答えた。
「永遠の命を授けた。・・さあ、キラよ。お前にも永遠の命を授けよう。」
「そんなものはいらない!ハンクたちを返せ!」
キラは、創造主のいる場所へ駆け上がろうとした。
だが、『黄色い円盤』の中で身動きが取れなかった。
「お前は、ここから出られると思っているのか?」
「必ず戻ると約束した。何としても、戻る!」
「愚かな・・・。」
創造主はそういうと膜の中へ消えた。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0