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3‐17 逃走 [AC30 第3部オーシャンフロント]

床が開き、『黄色い円盤』がゆっくりと下がっていく。
下には、ステラが待っていた。
このまま、あの『白い部屋』へ連れ戻されれば、逃げ出すことは無理だ。とにかく、ここから抜け出さなければならない。この『黄色い円盤』から飛び降りようとしても無理なことは前回試していた。ほかに何か方法はないか。必死に考えた。
静かに、ステラの待つフロアに着く。キラはゆっくりと『黄色い円盤』から降りると、ステラのほうへ歩いた。
「さあ、部屋に戻りましょう。」
ステラがそう言って、くるりと向きを変えた瞬間、キラは、ステラを後ろから羽交い絞めにした。
「ここから出る!出口を教えろ!」
ステラは震えている。
「さあ、どうやって外に出る?」
キラはステラの腕をさらに強く締め付ける。ステラは、声が出ず、首を横に振るばかりだった。
「どこかに出口への通路があるはずだ!」
キラは、ステラを羽交い絞めにしたまま、フロアを歩き回る。白い壁が続くばかりで、通路や扉さえもない。
天井の「創造主のドーム」の床が開き、球形のPCXが2体姿を見せた。ステラを救いに来たのだろう。
だが、キラがステラを羽交い絞めにしている状態で、PCXは近づくだけで何もしない。
「そうか・・・攻撃できないんだ!」
キラはそのままの状態で、さらにフロアの中を移動する。PCXは一定の距離を保ったまま、ついてくる。
一か所、フロアと中空部分を仕切っている壁が切れているところがあった。その前に、『黄色い円盤』があった。
「そうか、フロアの移動にはあれを使うのか・・・だが・・。」
それに乗れば、拘束されるだろう。
キラは『黄色い円盤』を避けて、壁の切れているところへ行く。中空部分の中を覗き込む。
真っ暗で底の様子は判らないが、強い上昇気流を感じる。
「どうするの?」
ステラが弱弱しい声で訊いた。
PCXが少し間合いを詰めてきた。
「ここから逃げ出す。さあ、行くぞ!」
キラはそう言うと、ステラを羽交い絞めにしたまま、中空部分にダイブした。
「いやあーー!」
ステラの叫び声とともに、キラは、落下していく。
キラが羽交い絞めにした手を緩めると、ステラは身を捩ってキラのほうへ向き、キラの体にしがみついた。ステラの着ている白い服が、風に煽られひらひらと舞う。

中空部分の底は真っ暗で、どうなっているのか見えない。
キラは落下しながら、周囲の様子を見た。
しばらくは、パトリのエリアなのだろう。白い壁が幾層も続いていた。
そこを抜けると、青い壁が同じように幾層も見えた。ここはプレブのエリアか、何人かの女性が通路に立っているのが見えた。皆、同じような顔をしていた。
そして、その下は緑色の壁が見えた。少し薄暗くなった。ノビレスのエリアだ。通路に多くの女性が座っている。部屋に入れないのか、蹲っているという方が良いかもしれなかった。

中空の部分の上昇気流は、落ちていくに従ってその勢いが強くなる。
キラは、ステラの服を手足で伸ばすと、全身で風を受け、落下速度をおさえる事が出来た。
ノビレスのエリアを通過すると、目の前が真っ暗になった。それでもまだ地面には到達しない。
前方、いや落ちていく地面の方角に、赤い光が見えた。距離は判らない。何だろうと考えていると、強い衝撃を感じて気を失った。

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