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3‐18 ドロスの住居 [AC30 第3部オーシャンフロント]

目を覚ますと、丸い天井が見えた。
ぐっと身を起こすと、周囲には、ぼろ布を纏った人間が多数座っている。
背を丸め、わずかに開いた布の隙間から、キラの様子をじっと睨みつけているようだった。
「ここは?」
キラが言うと、ざわざわと声がする。何かくぐもった声で話している。
「言葉が通じないか?・・誰か、話の分かる者はいないか!」
キラは叫んだ。すると、少し上背のある者が前へ進み出た。薄汚れたぼろ布で前進を隠しているため、性別はおろか、表情も判らない。
「ここは、ドロスの住居。私の名は、エルピスです。」
声は女性の様だった。
「あなたは、以前に、外からやってきた人たちの仲間ですか?」
目の前の女性が訊いた。
「外から?」プリムたちの事だろうとキラは思った。
「ええ、PCXが何人もの人間を連れて戻ってきました。」
「ああ・・そうだ。僕の名はキラ。彼らを連れ戻しに来た。」
それを聞いて、周囲にいたドロス達が騒ぎ始めた。
「静かに。」
静まると、エルピスは呆れた顔で言った。
「・・・仲間を連れ戻すとは・・・あなたはまだ、主の偉大なる力を判っていないのですね。」
「ああ・・創造主とやらにあったが、言っていることが理解できなかった。永遠の命だとか、そんなの馬鹿げてる。ステラからも話を聞いたが、主の御意志に従うだけだとか、母も父も居ないという。馬鹿げている。おかしいだろう。」
キラは言い放った。
「だが、真実です。私たちは、創造主が命を与えてくださったのです。」
エルピスは悲しげな表情で言った
「命を与える?・・そんな馬鹿な。それなら、どうして、そんなぼろ布を纏い、こんなところに押し込められている。なぜ、幾つもに振り分けられなければならない。あのタワーの上部では、何不自由なく暮らしているのに・・どうしてこんなふうに・・・」
キラの憤りにも似た言葉を聞きながら、エルピスは落ち着いた表情に戻った。
「すべては創造主の御意志なのです。」
エルピスはそう言うと、くるっと向きを変えた。
「この男を外へ。ここへ置いておくと禍になります。さあ、早く、外へ出しなさい。」
エルピスがそう言うと、周囲の者たちが一斉に、キラの寝ていたベッドを担ぎ上げ、ドロスの住居の出入口まで運んだ。
「待ってくれ!・・そうだ、ステラはどうした?」
それを聞いて、エルピスは再び向き直る。
「ステラ?」
「ああ、そうだ。タワーの最上部、パトリのステラだ。一緒に落ちてきたはずだ。」
「パトリの者が・・」
エルピスは驚いた表情を浮かべ、周囲に居る者たちを見た。周囲の者たちも一様に驚いた表情を浮かべている。
「誰か、見た者はいませんか?」
エルピスが訊く。だが、皆、首を横に振った。その様子を見て、エルピスが言った。
「あなたは、私たちの仕事場に転がっていました。でも、そこには、パトリの者などいなかったようです。いや、居たとしても、もはや生きてはいないかもしれません。」
「どういうことだ?」
エルピスはキラの問いに、少し苦々しい表情を浮かべている。


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