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追跡-8 [デジタルクライシス(シンクロ:同調)]

石堂の乗ったタクシーは、箱根峠ランプで左折して、芦ノ湖へ向かった。黒いワゴンとトレーラーも続く。
石堂は、湖畔に着くとすぐにタクシーを降りて、ボート乗り場へ向かった。タクシーの中から連絡していたのか、石堂はモーターボートに飛び乗り、さらに逃げようとする。
「大丈夫!手配してあるよ。」
アントニオが、カルロスに言って、モーターボートを手配していた。
一樹、剣崎、カルロスがモーターボートで後を追う。始末人もほぼ同時にモーターボートで後を追った。
「彼を何としても助けるのよ!」
剣崎は、そう言うと、拳銃を取り出し、一樹に1丁渡した。ボートを操縦しているカルロスはすでに銃を構えていた。
前を走る石堂のボートを、2隻のボートが追う。始末人も、剣崎たちのことに気づいたようだった。
ダーン!始末人のボートから銃声が響く。前を行く石堂のボートに向かって撃っている。揺れ動く標的に、そう簡単に当たることはなさそうだった。
「彼らは、相当、焦っているようね。」
剣崎は、隣を走るボートの様子を見ながら呟く。
「とりあえず、やつらを何とかしなくちゃ。」
と、剣崎が言うと、カルロスがニヤリと笑った。
「一樹、ボートは操縦できる?」
カルロスが訊いた。一樹は橋川に居た時、小型船舶免許を取っていた。
「ああ、大丈夫だ。」
「じゃあ、よろしく。」
カルロスはそう言うと、一樹に操縦を任せた。
どこから持ってきていたのか、黒いケースを取り出して開く。中には、見た事もないような大型のライフル銃が入っていた。銃口が大きい。そこから発射される弾丸の衝撃は尋常ではないのは明らかだった。
「カルロスは、元傭兵。まあ、みてなさい。」
剣崎が言うと、カルロスは銃を構える。
揺れるボートの上からの射撃。簡単にはいかないはずだった。
「そのまま、速度を保って。」
剣崎が少し厳しい口調で一樹に言う。
「大丈夫!」
カルロスは、すっと照準を合わせると、引き金を引いた。
ドーンという衝撃音と同時に、横を走る始末人たちのボートのエンジンから、火柱が上がった。
「戦争か!」
一樹は余りの事にそれ以上の言葉が出なかった。
始末人たちのボートは動けなくなった。それを確認すると、石堂のボートを追った。ちょっと目を離したすきに、石堂のボートを見失ってしまった。
「大丈夫。どこかの岸につけたはず。」
ボートに遭った双眼鏡で剣崎が石堂の行方を捜す。対岸に白いボートのようなものが見えた。
「あそこよ。」
一樹はボートを対岸に進めた。剣崎の言った通り、石堂の乗っていたボートが桟橋に留めてあった。
「逃げられたか!」
一樹は悔しそうにハンドルを叩く。
「いや、きっと、始末人は彼らだけじゃないはず。こうなることを予測して待ち構えているにちがいない。すぐに追うわよ。」
ボートを岸に着けて、陸へ上がる。
「レイさんは?」
剣崎がスマホで亜美に連絡する。
「少し横になっています。かなり疲れているみたい。これ以上は・・」
亜美には、剣崎が連絡してきた理由がわかっていた。
「剣崎さん!これを。」
一樹が、石堂が乗っていたボートの中を指さした。始末人たちが放った銃弾が当たったのか、操縦席の辺りに点々と血痕が落ちていた。
「致命傷ではなさそうだけど・・。」
剣崎は、操縦席の周囲を見ながら、ハンドルに手を置いた。その瞬間、石堂のイメージが脳裏に広がる。
≪操縦席に座り、片手でハンドルを握りながら、もう一方の手でスマホを握って、地図アプリを見ている。芦ノ湖周辺の地図ではない。そして、次の瞬間、銃声が響いて手からスマホを落としてしまった。≫
「どこかにスマホが落ちている。探して!」
剣崎が言うと、カルロスと一樹が操縦席の回りを探し、スマホを見つけた。電源を入れるが、ロックが掛かっている。
「貸して!」
剣崎はスマホを手にして、目を閉じる。サイコメトリーで、ロック番号を見つけて開いた。
スマホ画面には、地図アプリが開いてあった。そこには、東名高速を移動する赤い点がある。
「これは・・・片淵亜里沙ね。」
剣崎がすぐに気付いた。おそらく彼女が無事に目的地に着くかどうか、確認するために、石堂が彼女の荷物回復化にGPSを取り付けていたに違いなかった。
「まだ、移動中のようね。」
剣崎は、トレーラーのアントニオを通じて、チームに、後を追わせることにした。
「石堂を追いましょう!」
剣崎たちは、カルロスを先頭に、湖畔の林の中に入っていく。途中、いくつかの地点で石堂のものらしき血痕を確認した。林を抜けると、芦ノ湖スカイラインの道路に出た。道路には、血痕が数か所あった。
「剣崎さん、これは?」
道路に、警察バッジが落ちている。石堂が意図的に落としたに違いなかった。
剣崎は受け取り、サイコメトリーする。
「ここで、始末人に拉致されたようね。」

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