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2-18 朝食をともに [アストラルコントロール]

朝日が顔に当たり目が覚めた。そうだ、五十嵐がベッドにいる。そう思って立ち上がると、五十嵐も目が覚めたのか、むくりと起き上がった。まだ寝ぼけているのか、いきなり、着衣を脱ぎ始めた。パジャマでも脱いでいるつもりか、わからない。あっという間に、ほぼ、下着姿になってしまった。声をかけるとおそらく彼女は赤面するに違いない。気づかぬふりをして寝ていたほうがいいんじゃないかと考え、零士は、そのままソファに座って眠ったふりをした。五十嵐はまだ寝ぼけているのか、下着も脱ぎ捨てて、ふらふらと洗面所のほうへ行く。零士は彼女の行動があまりにも自然なので、しばらくそのままにしておこうと決めた。しばらくすると、バスルームからシャワーの音がした。
「なんだよ、シャワーか?」
この部屋で、シャワーを使ったことはないはずだった。だが、あまりにも自然にそれをこなしているのがおかしくてたまらなかった。
シャワーの音が止んだ。
「ねえ、零士さん!バスタオルある?」
五十嵐が極めて冷静にバスルームから零士を呼んだ。
「棚の中だ。」と、零士が答えると「ありがとう。」と帰ってきた。なんだか、おかしな気分だ。しばらくして、五十嵐がバスタオルを体に巻いたまま洗面所から出てきた。
「ありがとう。さっぱりしたわ。」
あまりにも平静な言い方に、零士も変な反応をするのがバカバカしいほどに感じた。
「ベッド、ありがとう。一日歩き回って疲れてて。でもね、零士さん、ベッドに運んでくれたのはいいけど、そのまま、放置はないでしょ?せめて上着だけでも脱がせてくれてもよかったんじゃない?」
なんだか勝手な言い分だった。
「気づいていたのか?」
「ええ、どうしてくれるかなって、ちょっと楽しみだったんだけど、素っ気ないんだから。」
まるで小悪魔だ。
「じゃあ、服を脱いで全裸になってシャワーを浴びたのも・・。」と零士が少しむっとして言う。
「え?見てたの?私の裸を見たの?へえ・・零士さんもそう言う人なんだ。そうかそうか・・」
さらに、五十嵐はいたずらっぽく言う。
「いい加減にしろ!」
零士は怒ってソファから立ち上がった。その拍子に、五十嵐にぶつかって、よろめいた。そして、体に巻き付けていたバスタオルがはだけた。
「いやあ。」
何度か聞いた、あの艶っぽい声をだし、慌てて、バスタオルで隠した。
「おじさんをからかうんじゃない!」
そのまま、零士はキッチンへ行った。五十嵐も立ち上がり、ベッドのある部屋へ行き、ショーツを身につけた。
「ねえ、零士さん、何かシャツを貸してくれない?昨日の服、汗まみれなのよ。」
『どこまで勝手なんだ』と零士は思いながら、「そこのクローゼットになにかあるだろう。」とだけ答えた。五十嵐はまだ下着姿なので、その部屋に行くのは止めた。
「ありがとう。・・へえ、・・あ、これが良いわ。」
五十嵐はクローゼットを物色して、白いシャツを着た。
零士は朝食を準備した。
「パンとコーヒーくらいでいいか?」と先ほどのことはなかったことにして訊いた。
「ええ」とだけ五十嵐が答えた。
「昨日調べたことだけど。」
零士の白シャツ1枚羽織った状態で、ソファに座った五十嵐が手帳を広げて話始める。
「息子の名前は、雄一郎。年齢45歳。東京の建築系の大学へ通っていた時、うつ病になったらしいわ。しばらく休学して、そのまま退学。大学では特に問題はなかったようだけど。精神科にも一度かかっていて、うつ病診断は受けているようだけど、異常行動とかそういうことはなかった。父親が言うような、他人に危害を加えるような精神的な病気とは言えないらしいわ。」
「そうなのか。」と零士は返答をして、キッチンから顔を上げて五十嵐を見た。
「おい、ちょっと、そんな恰好で・・。」
大き目の白いシャツを羽織った状態の彼女は、胸元も開いているし、下半身も・・いや、ショーツも丸見えに近い状態だったのだ。
「いいの、気にしないで。」

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