SSブログ

3-1 零士と山崎 [アストラルコントロール]

「射場零士さん、君に訊きたいことがあるんだが・・。」
鑑識班への指示を一通り出した後、山崎が近寄ってきて零士に言った。
「五十嵐、君にも確認したいことがある。」
五十嵐と零士は顔を見合わせた。
「今回の事件を解決できたのは二人の功績だ。特に、射場さんは我々警察では捜査が及ばなかったところまで調べてくれたのには正直驚いている。・・だが、いくつか不思議に思うことがあって・・これは、刑事としてではなく、一個人として、君に話を聞きたいと思ったんだ。どうだろう、話を聞かせてくれないか。」
山崎は丁寧な言葉で率直な思いをぶつけてきた。零士は承諾した。
翌日、零士は署に行き、山崎と面会した。
署内は、大きな事件として総力を挙げて捜査が始まっていた。署長も事件関係者と認定され、謹慎処分を受けることになった。
「ご足労をかけてしまって申し訳ない。」
刑事課の部屋の隣室にある会議室で、零士は山崎と面会することになった。五十嵐も同席している。
「さて、今回の事件でのご協力に、改めてお礼を言いたい。ありがとう。前回の難解な事件も、君の推理で無事自白を得ることができた。つくづく、君の能力には感服する。フリーライターの経験が能力を引き出したのか、そういう能力があったからフリーライターだったのか、わからないが、おそらく、我々、捜査員を超える力には間違いない。」
山崎の言葉に五十嵐はその真意がわからずにいた。
「山崎さん、僕のこと、覚えていませんか?」
零士が唐突に訊いた。
「ああ、はっきりと覚えている。被疑者として厳しい尋問をしたのは私の過ちだと今でも心に刻まれている。あれ以来、確証を得るまで、何人たりとも被疑者扱いしないと誓った。すまなかった。」
山崎は改めて謝罪した。
「本題に入ろう。前回の事件では、心中事件だと見抜き、今回は、離れに軟禁されている息子が犯人だと確信をもっていた。特に、抜け穴のことはさすがに驚いた。何か、君はその一部始終を見ているかのようで、もしかしたらそういう特殊能力を持っているのではないかと考えるんだが、どうだろうか?」
山崎はいきなり核心をついてきた。
零士は五十嵐を見た。五十嵐が山崎に「夢」の話をしているのではないかと確認した。五十嵐は零士の視線の意味を理解し、小さく首を横に振った。
「それに、二つの事件に偶然かかわったとも思えない。君を罪に問おうとは思っていない。むしろ、今後も捜査協力をお願いしたいと思うくらいだ。だが、その本当のことが判らなければ、それも難しい。驚くべきことなのかもしれないが、是非教えてもらいたい。」
山崎は頭を下げる。
零士は五十嵐に「話してもいいか?」と訊いた。五十嵐も、山崎の態度を見て小さく頷いた。
「わかりました。お話しします。ただ、荒唐無稽な内容ですから、信じていただけるかどうか自信はありませんが・・。」
零士はそう前置きして、「夢を見る」話をした。前回の事件の時も今回も現場に居合わせ一部始終を見ていたこと。そしてそれは、実際に起きていること。山崎はじっと聞いていた。
一通り零士が話し終わると、「そうか」と山崎は納得したように頷いた。
「だが、どうして、そんなふうに現場の夢を見るのだろうか?」
と山崎が訊いた。
「それはわかりません。一度だけならまだしも、二度続いています。いえ、正確に言うと、その後も、重要な場面を夢で見るんです。いや、正確に言うと、夢ではなく、自分の意思みたいなものがそこに飛んでいくという感じなんです。」
零士が言うと、山崎が答えるように言った。
「一種の幽体離脱のようなものなのかもしれないな。無論、そんなことが存在するとは信じていなかったんだが・・君の話を聞いて、もしかしたら、そういう現象も存在するのかもしれないと思うようになったよ。君は、その夢を見ている間はどんな感じなんだ?」
「完全に夢と同じなんです。気が付くとちゃんとベッドで寝ている。それに、現場にいても何一つ触れないし、声を出しても相手には聞こえません。ただ。見ているだけなのです。」
「そうか・・。」

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント