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3-2 予期せぬ人 [アストラルコントロール]

山崎と五十嵐、零士が話している会議室のドアが開いた。
「すみません。お邪魔します。」
零士と五十嵐は予期せぬ来所者に驚いた。
山崎が立ち上がり、その人物と握手をする。
「すみません。ご足労をおかけします。彼がお話ししていた射場零士さんです。」
山崎は、いきなり登場した人物に零士を紹介した。
入ってきたのは、一人ではなかった。女性が二人、そしてもう一人は幼い少女だった。
「驚かせてすみません。私は、剣崎と申します。警視庁特殊犯罪捜査室アドバイザー、FBI特別捜査員、CIA上級捜査員、それから・・まあ、肩書はいくつもありますが、ちょっと不思議な事件の捜査をしています。・・それから、こちらは、新道レイさん。それと、彼女はマリア。私の仕事を手伝ってもらっています。実は、特殊犯罪捜査室に、山崎さんから連絡をいただいたので話を聞きに来たんです。」
剣崎はそう言うと、そっと手を差し出した。握手を求められていると思い、零士が握手をする。剣崎が目を閉じる。レイもマリアも新道からの思念波を受け取った。
剣崎は、触れたものに残る思念波を読み取る能力がある。零士が持つ特別な能力を探るために握手をしたのだった。
剣崎たちは椅子に座り、零士をじっと見つめた。零士と五十嵐は、突然、見知らぬ女性が現れたことに驚き、呆然としている。
「はっきり言いますが、零士さんが夢と呼んでいることは、アストラルコントロールと呼ばれる特殊能力です。世間でいう幽体離脱、超能力の一つです。ただ、その能力はあなたのものではないようです。誰かが、あなたを操っている。」
剣崎は、ストレートに話した。
「ちょっと待ってください。いったい何なんです。いきなり表れて、アストラルコントロールとか、零士さんの能力じゃないとか、あなたたち、いったい何者なんですか?」
五十嵐が興奮して言った。
「すまない、五十嵐。実は前回の事件を解決した時、特殊犯罪捜査室に一部始終を訊かれたんだ。私もどういうことか理解できなかったんだが、世の中には、我々の捜査では解き明かせないような不可解な事件が起きているそうで、前回の事件の解決手法について訊かれた。そして、今回の事件。何か、不可解さがあったんで、彼女たちに相談に乗ってもらうことにした。」
「特殊犯罪捜査室には、優秀な部下がいるんです。彼は、日本で起きている様々な事件を分析し、射場零士さんのような、特殊な能力を使う人間を見つけることができるんです。今回、山崎さんから話を聞いて、ぜひとも話を聞かせてもらいたいとお願いしました。その矢先に二つ目の事件が起きた。我々は、事件発生からずっと射場零士さんの動向を把握していました。それで、今日、直接お話を聞くためにここへ来ました。」
「彼女たちは?」と五十嵐が、レイとマリアを見る。
「ああ、彼女たちは私のアシスタントです。気になさらなくて結構です。」
剣崎は淡々と答えた。
「でも、あんな幼い少女がアシスタントなんて変でしょ?」
五十嵐が食い下がる。
「彼女、亜美さんに似てるわね。」
剣崎はちょっと笑顔を見せて、レイとマリアに言った。二人は頷いた。
「秘密は守れるかしら?これからお話しすることは国家機密なの。いえ、それ以上かもしれないわね。もし口外したら命はないと覚悟してもらわなければいけないんだけど・・。」
剣崎は急に真剣な表情を見せて、五十嵐や零士、山崎に向かって言った。
「すみません。その前にさっき、僕は操られていると言いましたが・・どういうことなんですか?」
零士は剣崎の話の前に確かめたかった。
「アストラルコントロールは、意識を遠くに飛ばして透視する能力。その能力を持っている人間は限られている。あなたにその能力がないことはさっきわかりました。」
剣崎の答えは不十分だった。
「だから、それがどうして僕の能力じゃないと判ったんですか?」
零士は少し苛立ちを覚えて強い言葉で訊いた。
「仕方ないわね。それを説明するには、すべてをお話ししなければならないの。さっきの国家機密を漏らさないって約束できるかしら?」
もはや堂々巡りになるのは明らかだった。

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